2024/06/24

映画『ザリガニの鳴くところ』感想

おもしろかった。ロケ地をあそこにして、主役をデイジー・エドガー=ジョーンズにした時点である程度の勝ちが確定したと思う。

でも、ぶっちゃけ一流の映画ではないかなと感じた。だけど二流なりに一流に逼迫しているし、二流だからこそ、個人的な好みの領域に深く食い込んでくる。心の秘密の領域にしっくりと収まる映画じゃないかな。こういう雰囲気、たまにはいいね。すごくよかった。

そうだな、とても個人的な映画だと感じた。たぶん原作小説の雰囲気をうまく汲み取っているんだと思う。読んでいないからわからないけど。原作小説は、どちらかというとロマンス小説にあたるのかな? 普段ロマンス小説を読まないのでよく知らないんだけど……。

事前情報一切なしで観たから最初はどういう映画かわからなかった。綺麗な風景にそぐわない殺人の話からはじまって、どうなるのかと見守ってたら『きみに読む物語』っぽい雰囲気でひとりの女性の人生と恋愛の丁寧な描写がはじまって「おお、そっちか、いいじゃん」と引き込まれていった。

不思議なんだけど、牢のなかでカイアと弁護士のおじさんが話しているシーンで「これは二流だな……」って感じてしまったんだよね。なぜそう思ったんだろう? 俳優の演技は魅力的だったし、映像もきれいだった。照明とか撮り方の問題かな……。

二流に感じてしまった一因として思うのは、この映画のターゲットが明確に決まっていて、そのターゲットの好みに的確にフィットさせているから、もあるかなあ……。対象がピンポイントに狭くて、より広くたくさんの人に刺さるように作られていない。だからこそ、自分がターゲットだったらめちゃくちゃ刺さる。

先にも書いたとおり、おそらくターゲットは『ロマンス小説が好きな女性』だと思う。だけど、殺人の裁判に沿って話が進んでいくからターゲット層の存在を強く感じなくて、ターゲットじゃなくても受け入れやすいね。

判決が言い渡されるとき、まじでドキドキして手を組んで祈ってたよ……。無罪になってよかったね! となってカイアの家でテイトとキスして……いやいやそこまででいいよ! ベッドシーンいる? となったんだけど、そりゃまあね、ロマンス小説ならいるでしょうね。うん。

そのあとの結婚生活とカイアの死までのシーン、これって蛇足じゃない? と思ってたら! まさか最後の最後にあんなどんでん返しがあるとは……。これには感動した。

裁判の最終弁論で弁護士が不可能なこととして描写した事件当日のカイアの行動が、実は実際にカイアがとった行動だったということ……だよね?

わからないのが、弁護士がテイトと父親が船の横で和解の抱擁?しているのを見るシーン……。あれの意味がわからない……。

あと、帽子のこともわからない。チェイスについてた帽子の繊維、あれはどうしてついたの? そして何故それがカイアの家で見つかったの? カイアは別の町に行ってたじゃん。わざわざ帽子を取りに家に行った? テイトに罪を被せようとしたのならわかるんだけど、そうでもないみたいだし。あ、変装するためにあの帽子を持っていっていた? そうかもしれないね。

途中まで、カイアはテイトをかばっているんだと思ってたけど、ちがったね。ミスリードにまんまと騙されました。

あとから思い返してみると、カイアは身の潔白を主張していないんだよな……。あからさまにカイアが怪しいのは無実の証拠だと思っていたんだけど、逆だったという……。やっぱおもしろいなあ。ロマンス要素だけじゃなくて、こういうどんでん返しもあるからこの作品はいいね。

数週間映画を観ていなくて久しぶりに観た映画だったけど、すっごくちょうどよかった。この映画の美しい湿地のシーン、ずっと覚えているだろうな。『きみに読む物語』の白鳥の湖のシーンみたいに……。いい映画でした。

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