よしもとばななはたまに読みたくなる作家です。
図書館で見かけて、なんとなく読みたくなって読みました。選集だけあってすっごい分厚くて躊躇したんですが、これを機にまとめて読もうかなという気になったんでしょうか。
収録されている作品の半分は読んだことがあって、ちょっともったいない気持ちになりました。どうせならまだ読んだことのない作品が読みたいなあと思ってしまう人間です。
よしもとばななといえば、高校の教科書に作品がのっていて、解釈みたいなものを習いました。記憶が曖昧ですが、送られたシクラメンの花の意味とか文章からキーワードを抜き出して感情を当てはめたりとか。
生意気な高校生らしく、(よしもとばななを論理的に解釈するなんて、無粋なことするなあ)と思ってました。なんとなく、よしもとばななは感性の人という印象があったので。
よしもとばななが「こんなことがあったんだよね。困っちゃう」と書いたら読者が「そうなんだ。大変だね」ってなって、それでよしもとばななが「なんとなくこんな気持ちがしたんだよね」と書いたら、読者も「なんとなくその気持ちわかる気がするな」というかんじの小説だと受け取っていたので、解釈とか解説とかよしもとばななに必要か? と不満に思っていましたね。
いや、もしかしたら、よしもとばななを高校生に読んでもらうきっかけにするために題材に選んだのかもしれない。それだったら納得できます。人を選ばないし、読みやすいし、小説を読んだことがない子にも寄り添ってくれそうだ。
よしもとばななは基本的にゆるいんだけど、たまにヒヤッとする冷たさや怖さだったり、世界があまりに荘厳で崇高なことに気付かされて圧倒される凄さだったり、そういうギャップがいいですね。
今回読んだ本は「Occult オカルト」という題の通り、オカルトチックな話が収められているとのことでしたが、よしもとばななのお話って「オカルト」ではないですよね……?
なんといえばいいのか難しいですが、世間一般の人が認知している「オカルト」という言葉のイメージには当てはまらないというか。
確かに不思議なことが起こりますが、それは自然に起こることで、日常の中で当たり前に生起する問題のひとつというかんじ。
不気味さをことさら強調したり、怖がらせようという意図はない。ただ、不思議なこともあるものだなあ、としみじみ思う。
あら。なるほど。いま「オカルト」の意味を広辞苑で調べてみたのですが、「神秘的なこと。超自然的なさま。」だそうです。ぴったりだね。
「オカルト」って胡散臭くて世俗的で一部の人が熱狂的に信奉している、というひどい偏見があったので、それがちょっと修正されました。
さて、他の面白かった点は、初期ばななの拙さというか、言葉が無邪気に転がり出てもつれてるところです。若さのもたらすみずみずしさをそんなところに見つけました。頭の中の言葉にできないものをなんとか言葉にしようとする煩悶といいますか……。後期ばななは読んでいて引っかかりを感じることがなかったので新鮮でした。
作者の変化が小説ごとに表れているのはいいですね。よしもとばななの場合は、いろんな植物にぶつかりながら伸びていく南国のばななの樹みたい。ジャングルのなかで、陽がさんさんと照っていて、吹く風に生臭い花の匂いがする、みたいな。
吉本ばなな自選選集、「Occult オカルト」の次は「Love ラブ」だそうです。楽しみ!
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