2023/12/18

『エブエブ』をもう一度観た。

※ ネタバレありの感想です。

前回の記事を見てもらえればわかるように、昨夜『エブエブ』を観たわたしはおおいに感激し興奮していました。

一夜明け、その興奮はおさまるかと思われましたがそんなことはなく、今日も朝一番に再視聴しました。

ちなみに、昨晩の夢は『エブエブ』の世界観だった。『エブエブ』のわたしバージョンを見ているような。内容はよく覚えていないけれど……。

さて、一度観た映画はよっぽどのことがない限り再視聴することはない、と豪語していたわたしですが、このたび「よっぽどのこと」が起こり、めでたく再視聴する運びとなりました。

まさかなあ……。ネットフリックスに『エブエブ』が追加されたのはけっこう前だと思うのだけれど、こんなすごい映画をマイリストに入れたままにしていたなんて。

タイトルから「悟り」に関する映画だろうなと予想はついたので、「いまは悟りって気分じゃないからなあ……」と視聴を先延ばしにしていました。

予想のとおり「悟り」の映画ではありましたが、その予想をはるかに超える作品でした。

悟り×SF×カンフーアクション×家族愛という盛りだくさんの映画でしたね。

ところどころ日本のアニメの影響を感じた部分があり、そうなのかなと思ってWikipediaを読んでみるとやはりそうでした。

昨日はただただ圧倒されていただけでしたが、二回目の視聴で落ち着いて観られるようになりました。

税金の支払いという人間に課せられた苦しみが人生の悲哀を象徴する出来事として描かれていたところが面白かったですね。そこに目をつけたのは慧眼だと思いました。

税金とは、人類の文化的生活とは切っても切れないものです。有史以来、人間は税金を払い続け苦しめられ続けてきた。

ジョブ・トゥパキは生の虚しさに絶望し死を望みました。エヴリンもあわやそうなるかと思いましたが、同じ虚しさを感じれど、そこに希望を見出しました。むしろ生きることを選んだのです。

ふたりは同じベーグルを見ました。ベーグルとはつまり虚無のことではないでしょうか。

いつどこでなにが起ころうと「nothing matters」。

ジョブ・トゥパキとエヴリンがそれぞれに言う「nothing matters」が同じ言葉でも正反対の意味であることに気づきました?

なにをしても意味がない。もうどうだっていいというジョブ・トゥパキの投げやりな「nothing matters」。

なにをしてもいい。好きなことをやればいい。なにも気にしないというエヴリンの「nothing matters」。

陽と陰、正と負、プラスとマイナス、エヴリンとジョイがぶつかりあい、ゼロ=無限が生まれた。

重要な時間はほんのわずかにすぎない。その虚しさに押し潰されそうになったジョブ・トゥパキ。だからこそその時間を大切にしようと決めたエヴリン。

ひとつの家族の和解が宇宙を救った……。

はあ。すごいなあ。

とても驚いたのが、この映画、2時間20分あるんですね。

こんなに長いのにあっという間だった。本当に面白い映画は時間を感じさせないですね。つまらない映画は90分でも長いと感じるのに……。

他に良かったところでいうと……。

あのギョロ目のシールが伏線になっていて、第三の目を覚醒させたエヴリンを表現するものになるとは……。

悟りをひらいたエヴリンは天馬空を行くように、自由奔放に生きられるようになったのでしょう。

悟りをひらくとは何らかの不思議な能力を得るということではなくて、認識が根底から変わるというだけのことなのでしょうね。

だから、エヴリンは悟りをひらいても元の日常で普通に生きている。

だけどやっぱり変わったところはあって、それは自分らしく自由に生きられるようになった。愛する夫にキスをして、話を聞いていなかったら「失礼、今なんて?」と訊けるようになった。

エヴリンのようにどん底に生きる人が幸せになるには、少し考え方を変えるだけでいい。

受け入れられないものを受け入れ、世界を許す。

何も成し遂げられない自分に失望していたエヴリンはその失望を自分ではなく夫や娘に投影してぶつけていた。

だけど、その夫や娘を受け入れ許すことで、自分のことを受け入れ許し、そして世界を受け入れ許した。そうしたら、世界が、宇宙がエヴリンを受け入れて許してくれた。

悟りとはつまりそういうことなんだろう。たぶん。よく知らないけれど……。

ああ、おもしろかった……。

悟りとSFとカンフーアクションと家族愛をひとつの映画にぶち込もうだなんて、どこの天才が考えたんだろう。

あたまおかしいですよね。褒めてます。これは大いなる賞賛です。死ぬほどクレイジーってことです。

本当に感謝しかありません。

間違いなく『エブエブ』は映画史に残る作品となるでしょう。

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