2024/02/16

映画『ボーはおそれている』感想 ※ネタバレあり

迷っている。

今日映画館で観てきた『ボーはおそれている』は……おもしろかったのか、おもしろくなかったのか。

まず言わせてほしい。

今日のわたしのコンディションは悪かった。コンタクトだったし、午前中に用事があって疲れていたし、急いで映画館に向かったから昼食を食べ損ねたし、そもそも映画館で映画を観るのは苦手だ。

そして最初から、この映画に対する期待値が高すぎたのかもしれない。『ミッドサマー』『ヘレディタリー 継承』のアリ・アスター監督への無条件の期待。それが不当に高すぎたのかもしれない。

でも、『ヘレディタリー 継承』を撮った監督だよ……? おおいに期待してしまうに決まっているじゃないですか。おもしろい映画に違いないと思ってしまうじゃないですか。

わたしはアリ・アスターを信じ切っていた。実際に映画を観るまでは……。

そして映画館で映画を観ながらわたしは思ってしまった。「おもしろくない」と。

アリ・アスターの作品が「おもしろくない」!? わたしは血迷っているのか!? これってわたしのコンディションの問題なのかな!? わたしの審美眼が曇っているの? どうなんだ――!!

だめだ。いま感想を書いたら、おもしろくなかったことの羅列になってしまう。

だけど、わたしはアリ・アスターを信じたい。この映画はおもしろくて、わたしがたまたまそのおもしろさを感じ取れなかっただけだと思いたい。

だけどなあ……。三時間もあるこの映画をわたしは「長い」と感じ「いつ終わるんだ?」と思ってしまった。

おもしろい映画なら三時間なんてあっという間に終わるし、そもそも「この映画いつ終わるんだろ?」なんて考える暇はない。

上映時間を気にしてしまう時点で、映画に没入できていないということだ。

それになあ……。この映画ってさ、たぶん、ジャンル的にホラーやサスペンスじゃないよね? 予告ではオデッセイ・スリラーとか言っていたけど、その通りなんだよな。

ホラーを求めたお客さんは肩透かしをくらうし、サスペンスを求めたお客さんは拍子抜けする。

ただただ「不安」を煽るのを目的とした作品なんだよ。それも戦慄とかハラハラとかそういう派手にドキドキさせられる類の「不安」じゃない。

何か悪いことが起こるかもしれない、という漠とした不安。それがずーっと続いていく。その不安が的中することももちろんある。だけど、カタルシスというものがないんだよな。

モヤモヤするんですよ。微細で不快な不安がモヤモヤモヤモヤ蓄積していくんですよ。

モヤモヤといえば。最後の方、ボーが屋根裏に閉じ込められたシーンがあったじゃないですか。そこで、……これ、笑っちゃうんだけど、ペニスのモンスターがいたじゃないですか?笑

あれはなに?笑 けっこうシラケちゃうくらいお粗末な造形だったのですが……あ、あれはボーの幼児性を表現しているのかな。そっか。セックスで子を成すと死んでしまうという恐怖がボーの脳裏(=屋根裏部屋の暗闇)にあるんだ。だからペニスが恐怖の対象なんだ。

そう考えると、いろいろと深く考察できるところはたくさんある映画なんですよ。ボーが発達障害とか、母親の子に対する憎しみ/子の母親に対する憎しみとか。

そうそう。そしてやっぱりアリ・アスターらしさも至る所にある。後ろの方で不気味なことが進行してたり、これっておかしいよな? ということがさも当たり前のように起こったり、何がなんだかわからないことがたくさん起こるんです。

ちゃんとアリ・アスターしてたんですよ。

でも、でも、でも……!!

最後が爆発オチってあり――――!!??

ひっくり返ったボートがもがいてもがいて、静かになって、そしてアリ・アスターの名前が出た=エンドロールが始まった瞬間、わたしはあんぐり口を開けてしまいましたよ。

え、これで終わり!? まさか、と思って辛抱強く水に浮かぶボートを見ていましたが、結局なにも起こらず……映画は終わりました。

わたしはどう受け止めていいのかわかりません。

この映画、おもしろかったの!? おもしろくなかったの!?

よし、落ち着いて。自分に問いかけてみよう。

この映画をもう一度観たいか?

…………観たい、かなー……? 確かめてみたい気持ちはある。別の日の別のわたしでこの映画を観たら、おもしろいのかどうか。

だけど、また三時間耐えられるかと言われたら……難しいかもしれない。とりあえず今すぐにもう一度観たいとは思わない。

この映画の記憶が薄れて、ある日サブスクで配信されていたら観るかもしれない。

うーん。うーん。カタルシスを与えられそうで与えられなかったこのモヤモヤがアリ・アスターの狙ったものだとしたら、それは狙い通りだ……。モヤモヤするう~~!!

なにはともあれ、そういう映画でした……。

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