三月中消失していた読書へのモチベーションが最近持ち直しているみたいなので、肩慣らしに読んだ本。
ささやかなボリュームの本だけど、しっかりと恩田陸らしさがある良い作品だった。
わたしの言う『恩田陸らしさ』とは、不穏な雰囲気、入り組んだ謎、結末の不安定さのことです笑。
恩田陸って『夜のピクニック』とか『蜜蜂と遠雷』みたいな青春もので規格外のヒットを飛ばすけど、わたしにとっての恩田陸はミステリーの人でありホラーの人です。
『私の家では何も起こらない』は恩田陸にしてはシンプルな筋立ての本だったけど、その素朴さがストーリーの風味を純粋に引き立てていて、久しぶりの読書をした身に染みた。
何も起こらないとタイトルにあるけど、あんなにたくさん事件が起こってるじゃないですか……と思ったけど、よく考えてみると違うな。
凄惨な歴史を持つ家に住む彼女だけど、その生活のなかでは、何も起こっていない。何かを起こすのは生きている者で、死者はただ静かにそこにいるだけだ。
まあ、ちょっと脅かしたり怖がらせたりはするけれど、人間が引き起こす騒動に比べたら幽霊たちは静かなものだ。
生きている間あれだけ信じられないことを仕出かした人間たちが死者になったとたん静かになるの、なんか救われるな。
生の苦しみが苛烈であればあるほど、死の安らぎは深いのかもしれない。
読んでいるあいだ何度もぞっと鳥肌が立つ良い本でした。満足。
0 件のコメント:
コメントを投稿