読んでいる人にはなんのことかわからないかもしれない。いや、書いてある通りなんだけど。とりあえず経緯を記す。
図に示すとおり、わたしはベッドの足側で壁を背にして本を読んでいた。ふと眠くなって、いつのまにか傍らに本を置き、身体をずらして枕に頭を乗せた。ウトウトとしてふいに足を移動したら、足が何かに触れて、「?」と思った次の瞬間それが本だと気づいて鳥肌がたった。
なんだか不思議な心地がしたんだよな。禁忌を冒しているような。お地蔵さんを足蹴にしているような。女体の肉に足をうずめているような。なにか尊いものに裸足で触れている感覚。
考えてみたら、足で本を踏んだことって今までにない……と思う。レベルが違うかもしれないけれど、踏み絵ってこの感覚を極大に引き伸ばしたものなのかな。
聖なるものを裸足で踏み荒らす背徳感って、決して不快な気持ちだけではない……と正直に言って思った。身体の奥底から震えがくる。それは甘美といってもいいかもしれない。
しかもそれが、図書館から借りた本だったんですよ……。自分のものならまだしも、神聖なる図書館から借りた本に、わたしは足で触れてしまった。責められても仕方がない。
左足に少し触れただけで、本は物理的に損なわれたわけではない。だけど、この本を黙って返していいものか……。
かといって、「足で触れてしまったので弁償します」と図書館員さんに申告するか? 頭がちょっとおかしいと思われないかな。
うわあ。まだ左の足先にあの感触が残っている。足がしびれたみたいになってる。
この罪をわたしは抱えてこれから生きていくんだな。その罪を犯したときに否応なく生じたあの戦慄の記憶とともに……。
お盆の最終日にすごい体験をしてしまった……。おそろしい。本当にぞっとする出来事でした。
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