2024/09/10

『日本怪奇小説傑作集1』感想

夏真っ盛りのころ、図書館の一角でホラー小説特集をやっていたので、借りてチマチマと隙間時間に読んでいた『日本怪奇小説傑作集1』、初秋になってやっと読み終わりました。

おもしろかったな……。けっこうぞっとする話もあれば、拍子抜けの話もありましたが、それがまたホラー小説の妙といいますか、そういうものを感じてよかった。そのリアルな肩透かし感が本当にあったことのように思えて、それがまたいいんですよね。

小泉八雲にはじまり、泉鏡花、夏目漱石、森鴎外、谷崎潤一郎、芥川龍之介、江戸川乱歩、川端康成などなど総勢十七名の小説家の作品が載っている豪華なアンソロジー。

いや、小説家ってすごいすごいとは思っていたけど、ホラーを書かせるとそのすごさが身に染みてわかるね。だってさ、夏目漱石の作品なんて三ページしかないのに、きっちりぞーっとしましたもん。すごかったなあ。

このアンソロジー、有名作家が名を連ねているんだけど、意外なことに一番印象に残っているのはそういう錚々たる小説家の作品じゃなくて、寡聞にして存じ上げていなかった大泉黒石の『黄夫人の手』だった。

この作品、読みにくいというわけじゃないんだけどなぜか手こずって、読み終えるのに時間がかかったからよく覚えているんだと思う。他の作品と比べると量も多いし。話の内容としてはそんなに怖くはなかったんだけど、情景が脳にこびりついている。

ある友人がきっかけで中国人社会に迷い込んだ少年が不気味な体験をするという話だったんだけど。うーん、感心するほど小説の細部を覚えているなあ。大泉黒石か……。他の作品も読んでみよう。

他に印象に残ったのは村山槐多『悪魔の舌』、岡本綺堂『木曾の旅人』、大佛次郎の『銀簪』。いままで読んだことのない作家の作品がおもしろいと感じた。

このアンソロジーは全三巻で構成されているらしく……。しかも、1902年から1993年にかけての90年間にわたる作品が各巻ほぼ30年ごとに配分されているとのこと。驚くべきことに、意図してそうなったわけではなくて、これぞという作品を集めていったら自然とそうなったらしいです。すごいですね。

夏は怪談でしょ、と思って読み始めた本ですが、秋の怪談もオツかもしれませんね。次巻があったら借りて読んでみよう。

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