なんというか、先述の二作品が作家として成熟した時期に書かれたものなんだろうなあというのがわかった。訳者あとがきでも、『Sense and Sensibility』は実質的に処女作にあたるとのこと。内容も文章も物語の力も、その類まれなる才能の萌芽は感じるものの、『高慢と偏見』のような高みにはまだ至っていないかも……。
わたしが読んだのがキネマ旬報社から出ている翻訳で、おそらく映画に関連して出版された書籍だと思う。ずいぶん昔に『いつか晴れた日に』の映画は観ているんだけど、内容をぜんっぜん覚えていない……。
というか、どうしてタイトルを『いつか晴れた日に』にしたんだろう……?『分別と多感』のほうがかっこよくない?『高慢と偏見』だってタイトルを変えたら途端に話題になったんだから、オースティン作品を映画化するならタイトルの重要性を理解していそうなものだけど。
そもそも『Sense and Sensibility』がエリナとマリアンのことなんだから、タイトルが二人を象徴するものであったほうがいいじゃん。なぜ『いつか晴れた日に』にしたんだ。物語の内容とも関係がないし。なんかよくわからないセンスだな。
オースティン作品でなにが楽しみかって、主人公が誰と結婚するかということですが……。わたしは……エリナとブランドン大佐に結婚してほしかった……っ。だって! エドワードはあのルーシィなんかと婚約してそれを解消できないようなヤワな男じゃないですか!
エドワードの優柔不断さのせいでエリナがどれだけ苦しんだか考えると、エリナがエドワードを愛していようとエドワードにエリナを任せたいと思えないよ。
エリナのそばにいてずっと励まし同時に励まされていたのはブランドン大佐だし……。そもそも、いくら昔の恋人を思い出させるからって感情的なマリアンを好きになるなんて、ブランドン大佐もよくわからないよ、エリナのほうが絶対に気性が合ってるじゃん。
ちょっとなあ。結末にあまりカタルシスを感じることができなかった。あと、途中のくだりが長い長い……。エリナとマリアンがロンドン滞在中はやっとおもしろくなったけど、正直そこにいくまでは読むのに苦労しました……。
『高慢と偏見』も長いのに、まったくそれが苦にならなかったどころかぐいぐいひっぱられてすごいスピードで読み進めていったことを考えると、『Sense and Sensibility』はやっぱりストーリーが読者をひっぱる力が弱いのではないかな。
いやでも、恋愛小説をまったく読まないわたしがわりと楽しめたのだから、佳作といえよう……。というか、比較対象が『高慢と偏見』だから、分が悪すぎるというのもあるよね笑。『高慢と偏見』を超える恋愛小説はもうないのかもしれない……。
というわけで、期待が非常に高かった故に、ちょっと残念……。これでへこたれずに他の作品を読んでみよう。絶対にこの小説よりは完成度が高いはず。
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