この『終わりなき夜に生まれつく』は『夜の底は柔らかな幻 上・下』の前日譚。『夜の底…』はずいぶん前に読んでいる(2022年3月読了)。
本を選ぶときにつくづくすごいなあと思うのが、装丁。前情報とか一切なかったんだけど、『終わりなき…』のタイトルと装丁を見ただけで『夜の底…』のシリーズだろうなってわかった。
装丁で本の内容がほんのりわかるのって、よく考えるとすごいことじゃないですか? 色や絵や写真やフォントやタイポグラフィで、閉じられた本の内容を伝えることができるなんて……。すごい技術だよなあ。
図書館の本棚のあいだを歩いていると、いま自分が求めている本が呼んでくれるんですよ。よく聞くじゃないですか、そういう話。それって霊的な話じゃなくて、装丁によるものですよね。
装丁が本の内容を外の世界に発信しているから、その信号を無意識にキャッチして、自分が読みたい本に気づくことができる。装丁って、すごいなあ……。
本の内容の話をすると、話自体はおもしろかったんだけど、如何せん『夜の底』の内容をほとんど忘れちゃってて、十分におもしろさを享受することができなかった。
さっきまで葛城と神山を混同しちゃってたもん。『夜間飛行』で出てきた葛城と最後の短編の『終わりなき夜に生まれつく』の神山がごっちゃになっちゃってた。だってどちらも長身のイケメンだったから……。
葛城と神山、どちらも「か」で始まるから脳内で近くに配置されちゃって混同しちゃうんだよな。だからわたしが創作する時は、始まりの音がなるべく被らないようにスプレッドシートで人物名や地名、固有名詞の表を作ってました。
『夜の底…』は内容や登場人物はほとんど覚えていなかったけど、ラストの情景だけは脳に焼きついてて、それだけでもすごい小説だなあと思う。
恩田陸は「このシーンを書きたい!!」っていう熱い思いがこちらにがっつり伝わってくるから好き。あと、はじまりのワクワク感。
たしか『小説以外』というエッセイで読んだんだけど、小説を書く前にポスターを作るそうです、映画のポスターみたいなのを。自分で絵を描いて、煽り文を書いて「これはおもしろそうだ!」と自分の気持ちを高めてから小説を書き始めるとか……。
恩田陸って、正直「これはちょっとなあ……」と思う作品もあるんですが、わたしが恩田陸に求めているのは物語がはじまる時のワクワク感なんですよね。だから中盤終盤ラストが多少「うーん」という出来栄えでも構わない。
小学校の時、嵐が近づいてきていて、昼間なのに教室の電気をつけないといけないくらい外が暗くて、遠くでゴロゴロと雷鳴が鳴っている、そんな非日常感。嵐の前の予感。これがわたしの恩田陸観。(あれ、韻踏んでる?笑)
これを味わいたくて、恩田陸の本を手に取り続けています。まだまだ読んでいない恩田陸の本があるから嬉しい。これからも読み続けます。すべて読む日がくるまで……。
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