下巻を読んでから感想を書こうかなと思ったけど、上巻の内容を忘れそうなので書いておく。
なぜ『薔薇の名前』を読もうと思ったかというと、最近『百年の孤独』が文庫化しましたよね。どうやら『百年の孤独』と『薔薇の名前』は「文庫化したら世界が滅びる」と言われているそうです。
『百年の孤独』はけっこう前に読んでいて、あまりにも衝撃だったので単行本も買いました。『薔薇の名前』も有名なことは知っていて、いつか読もうと思っていたのでこれを機に読もうかなと思った次第です。
いやはや、これね……おもしろい!! まさしく奇書!! 不思議なんですよ、ほんとうに不思議。この本は不思議です。
物語の舞台は1300年代の修道院。バスカヴィルのウィリアムとメルクのアドソのふたりが僧院で起こった不可思議な殺人事件を捜査するお話。
そう、なんとこの小説、修道士が探偵役の推理小説だったんですよ……! 意外じゃないですか? じゃあなんでこんなに分厚いの? って思いますよね。なぜなら、神学の小難しい話を延々と話し合っているからです。
この本の不思議さを説明すると……。まず、書いてある事柄が難しすぎて理解ができないにもかかわらず、スラスラと読み進められるんです。まったく引っかかりなく。はじめての経験です。
登場人物たちは頻繁に(というかほぼ全編にわたって)宗教上の教義の議論をしているんですが、これがほぼ理解できない。難しすぎる。だけど理解できないことが苦痛じゃない。そのままスーッと読んでいってしまう。
博識明晰明朗老僧のウィリアムと、勉強熱心素直で可愛げある見習い修道士アドソのキャラクターも気持ちがいいし、不気味な殺人事件の謎を追うストーリーも最高におもしろいし、高名な修道院の闇にはびこる罪の影がいい具合にちらつかされて、上巻の終わりでは驚きの出会いもあったりして、もうこれがおもしろいのなんのって……。
当時の宗教的な対立や宗派、異端審問や教皇の意向の話は正直ちんぷんかんぷんなんだけど、読ませる文章なんだよなあ……。
それにしても、この本が世界中でベストセラーになったんだ……。どういう人が読んでいるんだろう? 一般人が読むにはちょっと難しくないか? でもわかる気がする。この本の不思議な魅力を世界はちゃんと見出して広めていくんだ……。本を読む者にとっての福音だね。
この本は、世俗の喜びを排して書物や知識に熱狂する者たちが描かれていて、どうやら事件の核心も一冊の書物が関係しているようなんです。
ウンベルト・エーコ、本を読むことを愛しているんだろうな……。彼の博学ぶりは『異世界の書: 幻想領国地誌集成』という本を図書館で見つけて知りました。これが一万円くらいする巨大な図鑑なんです。欲しいなあ。『薔薇の名前』も手元に欲しいな。
知識もすごいんだけど、読者をひっぱる力もすごい。こんなに力強くひっぱっていってくれる小説、なかなかないです。
この本を読み終わるまでにどれくらいの時間がかかるんだろうと戦々恐々としていたんですが、予想よりもずっとはやく読み終わることができました。はやく下巻を読みたい!
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