最近、山吹静吽『夜の都』を買いました。図書館で幻想小説をピックアップして紹介していたことがあって、そこで見つけて読んだんですが、いつまで経ってもその本のことを忘れられなくて。
その本が手元に届いた今、自分のなかで幻想小説ブームがきていて、しかも女性作家のものが読みたいなあと思い、ネットでおすすめを検索して『龍宮』を借りて読んでみたんですが、うーん、幻想小説ってクセになる。
日常とは逸脱した感性がさらりと当たり前のように眼前に供されて、ぎょっとする間もなく物語に引き込まれていく。不思議な湿っぽい空気を吸って、嗅いだことのない匂いを嗅ぎ、異形の肌触りを感じる。
それぞれの短編があまりにも不可思議で生々しかったから、唯一無二の記憶として脳に刻まれたみたいで、タイトルを見ただけでその物語の世界を生々しく思い出せる。
あとで思い出せるよすがとしてタイトルをここに書いておこう。
『北斎ほくさい』『龍宮りゅうぐう』『狐塚きつねづか』『荒神こうじん』『鼹鼠うごろもち』『轟とどろ』『島崎しまざき』『海馬かいば』
すごいなあ。タイトルを見て、物語の筋を思い出していると、自分でも知らない間にその物語のなかにずるずると引きずり込まれていく。
女性を追う蛸男、人家の裏戸で残飯を食らう乙姫、ケーンと鳴く老人、植木鉢のあいだを走る荒神様、長い爪でヒョイとアレを捕まえるもぐら、長い廊下の先で姉と夫婦になる弟、先祖の膝に乗り泣く女、人に混じって暮らす海のもの。
形をもち、皮膚があり血が通い、その下にどろどろとした内臓と欲望がある異形と人間が互いを求めてウロウロとさまよう世界。
そんな世界を静かに、どことなくおかしく描きだす川上弘美の世界、もっと読んでみたい。
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