おもしろかったけど、すこーしだけ、なんというか、うーん。なんていえばいいか難しいけど……、超越を感じなかった。幻想小説を期待して読んだからかな。いや、この本は分類するなら幻想小説、なのか。うん……。
文句なしにおもしろいのに、そこまで読後に興奮できなかったのは、もう完全に好みの問題だろうな。話の筋もいいし、登場人物も魅力的だし、すごく印象に残る物語だと思う。だけど、なんだか手放しに熱狂できない。作家にすべてを委ねることができなかった。
わたしは、人間が書けないものを書くのが小説家だと思っていて。『魚神』を読んでいるあいだ、これは人間が書いたものだという意識がずっとあった。
先のブログに書いたけど『なんたってドーナツ』で千早茜のエッセイを先に読んでしまったからかなあ。でも、作家のエッセイを読んだあとでも、小説を読んでいるあいだは作家の存在を忘れてしまえる作品もあるし。
作品が作家から離れて、それだけで存在するような本がやっぱりおもしろいなあと感じるので、そういう観点から見たら、『魚神』はわたしの琴線には触れなかったかな……。
これを言ったら本当に失礼なんだけど、正直に書くと。『魚神』で白亜が蓮沼と心中未遂をしたところまで一気に読んで、途中で中断してネット小説を読み始めたんですね。そうしたら夜を徹してそのネット小説を読んじゃって。三十万字越えの大作。
その小説はネットで有名なわけでもなく、数ある作品のなかのひとつなんですよ。どこかの誰かが無料で公開してくれている作品。だけどすごい迫力で、途中でやめられず結局朝まで読んでしまいました。感動して泣いてました。
その作品を読み終わり、ひと眠りしてそれから『魚神』の続きを読んだのですが。ちょっと拍子抜けしちゃったっていうのが正直なところ……。ネット小説のほうがおもしろかったとは言いませんが、もっと格の違いを見せつけてほしかった。
でも、千早茜はこの本が長編処女作らしいから、今はどういう小説を書いているかが重要なんだよな。うーん。千早茜の他の本を読むかは……微妙……。肌に合うか合わないかもあるし……。
『男ともだち』が気になるので、それを読んでみようかな。
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