2024/04/23
オーエン・コルファー『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』感想
#1030 恩田陸『私の家では何も起こらない』感想
三月中消失していた読書へのモチベーションが最近持ち直しているみたいなので、肩慣らしに読んだ本。
ささやかなボリュームの本だけど、しっかりと恩田陸らしさがある良い作品だった。
わたしの言う『恩田陸らしさ』とは、不穏な雰囲気、入り組んだ謎、結末の不安定さのことです笑。
恩田陸って『夜のピクニック』とか『蜜蜂と遠雷』みたいな青春もので規格外のヒットを飛ばすけど、わたしにとっての恩田陸はミステリーの人でありホラーの人です。
『私の家では何も起こらない』は恩田陸にしてはシンプルな筋立ての本だったけど、その素朴さがストーリーの風味を純粋に引き立てていて、久しぶりの読書をした身に染みた。
何も起こらないとタイトルにあるけど、あんなにたくさん事件が起こってるじゃないですか……と思ったけど、よく考えてみると違うな。
凄惨な歴史を持つ家に住む彼女だけど、その生活のなかでは、何も起こっていない。何かを起こすのは生きている者で、死者はただ静かにそこにいるだけだ。
まあ、ちょっと脅かしたり怖がらせたりはするけれど、人間が引き起こす騒動に比べたら幽霊たちは静かなものだ。
生きている間あれだけ信じられないことを仕出かした人間たちが死者になったとたん静かになるの、なんか救われるな。
生の苦しみが苛烈であればあるほど、死の安らぎは深いのかもしれない。
読んでいるあいだ何度もぞっと鳥肌が立つ良い本でした。満足。
2024/04/22
近所の本屋さんが潰れるらしい。
ほんとに悲しい。ここ数年、わたしが本をせっせと買うようになったのは、その本屋で買いたいからという理由だったのに……。
歴史のある本屋で、いろんな作家や漫画家が訪れた素敵な場所だった……。壁に漫画家のサインと絵が描いてあったり、サインが飾ってあったり。
温かみのある木の床と本棚で、こじんまりとしていて、ちょっとした展示スペースもあって。
その本屋を少しでも応援したいから、便利なAmazonを使わずに書店員さんに勇気を出して声をかけて注文していたのに……。
本を店頭で注文する行為、わたしにとってはけっこうストレスなんだけど、そのストレスを我慢してでも存続させたいし本を買うのが楽しい、そう思える本屋さんだった……。
わたしみたいに読みたい作家が限られている人間には、ふらりと入った本屋で思いがけず良作に出会うという機会はとても貴重だったんだ。
あああ……。もっと買ってあげられればよかった。
あと悲しいのが、わたしの一か月に一度の楽しみが潰えるということ。
今年の一月から〈こそあどの森シリーズ〉を一か月に一冊買うというお楽しみを自分にプレゼントしていたんです。
全十二巻のシリーズなので、ちょうど一年で全巻揃う♪と楽しみにしていたのに……。
その本屋で買うという行為が好きだったのに……。特別感があったのに……。
手塚治虫全集とか、そろそろ少しずつ買い揃えようかなと思っていたのにな……。
本棚を見てみると、その本屋さんで買った本が並んでいて、それを見るたびに甘やかな思い出がよみがえります。特に店頭でなにげなく出会った本は思い出深いし、それを目にした光景もはっきり覚えている。
こんな美しい思い出を与えてくれた本屋さんに感謝の念が尽きない……。
本棚には限りがあるし金銭的にも限度があるなかで自分なりに応援したつもりだけど、もっともっとたくさん本を買ってあげればよかった……。
はあ。悲しい……。
本当に悲しい。あの本屋さんが、わたしの人生からなくなってしまうなんて。もう思い出のなかでしかあの店内に入れないなんて。
最後のはなむけにたくさん本を注文しようと思います。
映画『ヴァチカンのエクソシスト』感想
2024/04/21
映画『ファンタスティック・プラネット』感想
カルト的人気があるみたいなのでいつか観なくちゃなあと思っていた作品。実はあんまり気が進まなかったけど、やっと観ることができて達成感。
作品の評価としては……わたしにはちょっと高尚すぎたかな。わたしはどちらかというと世俗的な感覚の持ち主なので、この作品の面白さを十分享受することはできなかった。
最初観た時は最後まで通して観ることができなくて、数日経ったあとにやっと最後まで視聴できた。
わたしはたぶんフランス映画の感性と相性が悪い。やっぱり根がミーハーで教養がないから、フランス映画を理解し面白がるのはちょっと難しいと感じる。
それにね……やっぱり絵がね……。なかなか受け入れがたいというか。印象に残る唯一無二の絵で映画にはぴったりだと思うんだけど、好みの観点からいうとnot for meかな……。
だけどいまでもはっきりシーンを覚えているくらい記憶に残る絵だった。そこは本当にすごいと思う。
どうしてわたしにとってはあんまり刺さらないのかなと考えてみたのですが、映画全体を通してなんとなく寂寥感があるからかなあと思います。
見たことのない生物、植物、建物、世界が延々と続くじゃないですか。すべてが見慣れなくてどこにも拠り所がない。唯一見慣れた人間も小さくて卑小な存在として描かれている。
素晴らしい夢を見たけど、起きたらすべて忘れてしまったかのような空虚な気持ちになる。
そういう虚しさを忘れようと汲々としているのに、それを思い出させるこの映画が苦手なのかもしれない。
個人的にはあまり好んで観ないけれど、観る価値のある映画として人にオススメはすると思う。
2024/04/18
映画『オデッセイ』感想
やっぱり宇宙を扱った映画って面白い! 名作が多いですよね。なんでだろう。面白くない作品は日本に入ってこないだけかな? それとも製作費が高くなるから必然的に面白い脚本しか通らないんだろうか。それか有能監督が一度はやりたがるのが宇宙ものなのかも。
パッと思いつくだけでも『インターステラー』『ゼロ・グラビティ』『ファースト・マン』『2001年宇宙の旅』があるし……。あ、『スター・ウォーズ』シリーズも。
『オデッセイ』は一時期話題になってたので観たいなあと思ってはいたのですが、期待しすぎてなかなか視聴できなかったんですよね。期待が高すぎるとなかなか気軽に観れなくて……。
だってリドリー・スコットですよ? そりゃあ大いに期待してしまうじゃないですか。
それで気分が行き詰っているときに「本当に面白い作品が観たい」と思って選んだのがこの映画でした。
結果、塞いだ気分に見事に風穴を開けてくれました。すごいぞリドリー・スコット。期待を裏切らない男だ。
この映画、前編通して明るい気分が通底にありませんか? 絶望的な状況でもそれを必ず覆せるマンパワーをみんなが信じている。その信頼が映画を重苦しさから解放しているような気がする。
この明るさって科学や人に対する信頼もあるけど、主人公のワトニーの性格によるものも大きいのかも。原作小説がそんなかんじなのかなあ。
この映画の良さって「地に足がついている」感覚を得られるところかも。頭だけじゃなくて体も使う。その確かさが心に食い込んでくる。
ワトニーが植物学者としての専門知識を駆使して実際に畑を作ってしまうところとか、現在の地球=わたしたちの生活と地続きなんだろうなと思えた。近未来の空想の話じゃなくてね。
科学を近未来SFという魔法でごまかしていない、と感じられたんですよね。たぶん実際の科学技術からそう離れていないんだろうなと。
もちろん他の作品も綿密な取材に基づいて作られているんでしょうけど、表現したいものがそれぞれ違うじゃないですか。家族の絆がテーマだったり、宇宙への憧れがテーマだったり。
この映画の場合は、科学技術が進歩していったらこういう未来があるんだろうという未来への展望、科学というものへの期待、そのワクワクがテーマだと感じました。
この原作を書いた人って本当に科学が好きなんだろうな。科学に接するとワクワクして、いろんな想像が広がるんだろうな。
そのワクワクが伝播して科学音痴のわたしでも楽しいと感じました。
リドリー・スコットの堅実な映画作りも相まって、作品の魅力がさらに高まったと思う。
何歳になってもこういう未来への希望を描けるってすごいな。
風通しのいい、しっかりした作りの、とても気持ちがいい作品でした。
映画『劇場版 名探偵コナン 世紀末の魔術師』感想
最近は元気もないしブログを書くのも飽きてしまって、映画は観てるし本も読んではいるけど感想は書いてませんでした。
けどすこし元気になってきたので、感想を簡単に書こうかなと思います。けっこう前に観たので内容おぼろげになっています。あしからず。
この映画はブログに何度か出てきている某さんがオススメしてくれたものです。うふふ。
作品をオススメしてくれる人がいるって日々の生活を彩ってくれますね。自分ではたどり着けなかったであろう作品に出会うきっかけになってくれてありがたいです。
この作品でコナンをひさしぶりに観たんですけど、おもしろかったなあ。最後に観たのが小学生くらいの時だから、もう何年前になるんだろう……。
映画が大ヒットしているので興味はあったんですが、コナンって長年続いているから、途中から参入するのはけっこう敷居が高くて……。
でも今回頼もしいガイド=某さんがいるのでなんとか飛び込むことができました笑。
映画の公開は1999年だそうで、わたしは90年代のアニメの質感が大好きなので僥倖でした。あのちょっとザラっとしている手書きの質感が好きなんです。特に発光の表現が大好き。やわらかくて懐かしい。
そうだな、なんかノスタルジーポイントが付加されてさらにおもしろいと感じた。
テンポも今の感覚からするとちょっと遅いんだけど、そこがまたいいんですよね。ノスタルジーポイント加点です。
今夏に公開される映画が怪盗キッドと服部くんの映画だそうで、その関係でキッドや服部くんの映画がネットフリックスでいくつかやっていたみたいです。
怪盗キッドとか小学生のときにハマってたら本当に沼だっただろうなあ……。惜しいことをした……。小さい時からちゃんとコナンを観ておくんだった……。
改めて観てみるとコナンってよくできてるなあと思ったのが、あれって探偵ものに冒険活劇が合わさってそこにキャラ萌えも加わるというエンタメの粋が複合されたものなんですね。
シャーロック・ホームズや江戸川乱歩の系譜を正統に継いでいながら、新しいものを見せ続ける。これってすごいことだなあと思います。
オススメしてくれた某さんに感謝です。コナンの魅力に気づかないまま過ごすところだった……。
あさのあつこ『バッテリー』感想
ここ数日間、本当に『 バッテリー 』のことしか考えてなかった。一日に一冊、時に二冊読んでいて、さっきⅥの完結編を読み終わったのですが、この、行き場のない気持ちをどうすればいいのか、わからない。 感想ブログなんてものをしているわたしだけど、実は読んでも感想を書かない場合もあって。 ...
-
あんまり俳優やアイドルに熱狂することはないんですが、局所的に心臓を刺されることが時たまあるので、映画のなかでキュンときた男たちについて語ってみます。 まず、キアヌ・リーヴス。若い時のキアヌが特に好きで、『 マトリックス 』とか『 コンスタンティン 』も好きだけど、『 マイ・プライ...
-
アニメシリーズと『ロンド・ロンド・ロンド』を観てから視聴しました。 すっごかった……。映画の新しいあり方を見せてくれたような気がする。その新しいあり方の名前がつまり「ワイルドスクリーンバロック」ということなんだね。 『ロンド・ロンド・ロンド』を観て改めて思ったんだけど、この物語っ...
-
クレヨンしんちゃんの映画を初めて観たんだけど、いい!! めっちゃよかった。 このブログに度々出てくる(というかその人しか出てこない)某さんにまたまた教えてもらって観ました。 某さんとね、先日お会いしましてね……。眩しいくらいの美人で目ん玉飛び出ました。お会いしているあいだ夢見心地...