2024/10/31
『ベスト本格ミステリ2012』感想
2024/10/22
柳美里『家族シネマ』感想
読んだことのない作家、特に女性作家の作品が読みたくて、いろいろ迷った末に選んだのが柳美里の『家族シネマ』でした。
柳美里を読むのはこの本がはじめて。なぜ今まで読まなかったかというと、柳美里って虐待が報道されたことがありましたよね。それで読むのをやめました。
報道が具体的にどういう内容だったか、虐待が本当にあったのか、今となってはわかりませんが、その記憶が薄れていたので手に取ったというのが正直なところです。
わたしは好きな作家ばかり読んで新しい作家をなかなか開拓しないし、したとしても気に入ることはほとんどありません。柳美里も、心から好きになれたとは言えない……。
でも、読みごたえはありました。特に表題作で芥川賞もとった『家族シネマ』は静かな気迫があった。
家族という人間の集まりの醜さ、煩わしさを淡々と映している。そして壊れた家族で生きてきた者の歪(ひずみ)が性の乱れとして表出することへの諦め。自分を大切にすることができない人間の悲しい性(さが)。
わたしも家族とは醜く煩わしいと思っていた時期があったし、自分を破壊するために性を徒に振りかざしたこともあるし、自分を大切にできなかった。
でも、そんなわたしがこの本を読んだからといって何も変わることはなかった。共感もしない、救いもない、怒りもない。でも悲観的ではない。そして爽快感もない。
でも、それが心地いい気がする。ほっといてくれる安心感。ただ情景を見るだけで、心かき乱されることもなく通り過ぎていく。
助けが必要なわけではない、救いを求めているわけでもない、浄化も昇華もどうでもいい。そういう心境にとって、この小説の距離感はなかなかいい。
柳美里の他の作品を読むかどうかは……ちょっとわからない。他にも読んだことのない作家を読んでみてから決めよう。
2024/10/14
ドラマ『地面師たち』
2024/10/12
フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』感想
2024/10/09
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前 上』感想
下巻を読んでから感想を書こうかなと思ったけど、上巻の内容を忘れそうなので書いておく。
なぜ『薔薇の名前』を読もうと思ったかというと、最近『百年の孤独』が文庫化しましたよね。どうやら『百年の孤独』と『薔薇の名前』は「文庫化したら世界が滅びる」と言われているそうです。
『百年の孤独』はけっこう前に読んでいて、あまりにも衝撃だったので単行本も買いました。『薔薇の名前』も有名なことは知っていて、いつか読もうと思っていたのでこれを機に読もうかなと思った次第です。
いやはや、これね……おもしろい!! まさしく奇書!! 不思議なんですよ、ほんとうに不思議。この本は不思議です。
物語の舞台は1300年代の修道院。バスカヴィルのウィリアムとメルクのアドソのふたりが僧院で起こった不可思議な殺人事件を捜査するお話。
そう、なんとこの小説、修道士が探偵役の推理小説だったんですよ……! 意外じゃないですか? じゃあなんでこんなに分厚いの? って思いますよね。なぜなら、神学の小難しい話を延々と話し合っているからです。
この本の不思議さを説明すると……。まず、書いてある事柄が難しすぎて理解ができないにもかかわらず、スラスラと読み進められるんです。まったく引っかかりなく。はじめての経験です。
登場人物たちは頻繁に(というかほぼ全編にわたって)宗教上の教義の議論をしているんですが、これがほぼ理解できない。難しすぎる。だけど理解できないことが苦痛じゃない。そのままスーッと読んでいってしまう。
博識明晰明朗老僧のウィリアムと、勉強熱心素直で可愛げある見習い修道士アドソのキャラクターも気持ちがいいし、不気味な殺人事件の謎を追うストーリーも最高におもしろいし、高名な修道院の闇にはびこる罪の影がいい具合にちらつかされて、上巻の終わりでは驚きの出会いもあったりして、もうこれがおもしろいのなんのって……。
当時の宗教的な対立や宗派、異端審問や教皇の意向の話は正直ちんぷんかんぷんなんだけど、読ませる文章なんだよなあ……。
それにしても、この本が世界中でベストセラーになったんだ……。どういう人が読んでいるんだろう? 一般人が読むにはちょっと難しくないか? でもわかる気がする。この本の不思議な魅力を世界はちゃんと見出して広めていくんだ……。本を読む者にとっての福音だね。
この本は、世俗の喜びを排して書物や知識に熱狂する者たちが描かれていて、どうやら事件の核心も一冊の書物が関係しているようなんです。
ウンベルト・エーコ、本を読むことを愛しているんだろうな……。彼の博学ぶりは『異世界の書: 幻想領国地誌集成』という本を図書館で見つけて知りました。これが一万円くらいする巨大な図鑑なんです。欲しいなあ。『薔薇の名前』も手元に欲しいな。
知識もすごいんだけど、読者をひっぱる力もすごい。こんなに力強くひっぱっていってくれる小説、なかなかないです。
この本を読み終わるまでにどれくらいの時間がかかるんだろうと戦々恐々としていたんですが、予想よりもずっとはやく読み終わることができました。はやく下巻を読みたい!
2024/10/08
恩田陸『終わりなき夜に生まれつく』感想
2024/10/06
映画『10 クローバーフィールド・レーン』感想
あさのあつこ『バッテリー』感想
ここ数日間、本当に『 バッテリー 』のことしか考えてなかった。一日に一冊、時に二冊読んでいて、さっきⅥの完結編を読み終わったのですが、この、行き場のない気持ちをどうすればいいのか、わからない。 感想ブログなんてものをしているわたしだけど、実は読んでも感想を書かない場合もあって。 ...
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