2024/02/28

映画『テルマ&ルイーズ』感想 ※ネタバレあり

やっっっと観れた……。

こういう有名作品ってドラマとか映画とか観てると当たり前のようにネタをぶっこまれるから、本当にはやく観ておかないといけませんね。

たしかこの映画の最期のシーンも『ギルモア・ガールズ』かなんかで観てしまったんだよな……。あの印象に残るカットは一度観たら忘れられないじゃないですか。

これでもう『テルマ&ルイーズ』のネタをどこで観ようが安心していられる……。

ルイーズ役のスーザン・サランドンの主演映画は二本くらい観たことがあって、「この女優の扱い方……なんかの有名作品に若い頃出てたんだろうな」と思っていたんですが、まさかの『テルマ&ルイーズ』だったとは……。

この作品、あまりに有名なのでもっと昔の作品だと思っていたら、1991年公開でしかもリドリー・スコットが監督をしているじゃないですか! リドリー・スコットってこういう作品も作れたのね……。

リドリー・スコット好きなのに作品全部を把握しているわけじゃないので、映画を観始めてから初めて知って驚愕することがよくあります笑。『ブラックホーク・ダウン』も映画が始まってからリドリー・スコット監督だと知って驚きました。

はあ、もう一度観たいくらい良かった……。だけどもう配信終わっちゃったんだよな。有名な作品ってすぐに配信終わっちゃうから……。

この映画、あらすじだけだと絶望的な映画なのに、どこか楽観的というか……暗い映画じゃないのがすごいですよね。

テルマとルイーズが追い詰められながらもどこかに解放感を感じていて、逃避行を楽しんでいるのがわかるからだろうな。

それにしても、二人の旅のはじまりとおわりの変化……特にテルマの変化はすごかったですね。テルマは最初世間知らずの甘ちゃんだったのに、最後の方ではルイーズが引くくらいワルになっててかっこよかった笑。

二人を気にかける刑事がいたじゃないですか。あの人に頼れば、なんだかんだで元の生活に戻れる可能性があったわけですよ。それに加えてルイーズの恋人も二人を助けようとした。だけど二人は男たちが差し伸べた手を取らなかった。

男に頼るのなんか、もうウンザリしていたんでしょうね。テルマは暴君のような夫の支配下で生きてきて、ルイーズはテキサスでレイプされている。ルイーズはあのダンディで情熱的な恋人のプロポーズも受けなかった。

テルマとルイーズは、もう二人きりで生きていくと心のなかで固く決めていたんでしょうね。だから、捕まるくらいなら最後まで二人で生き抜こうと、崖へ突っ走っていった。

二人が崖から飛んだ、その決意と絆に納得できるだけのものを、リドリー・スコットはちゃんと映し出していた。二人が辿った旅路はあのエンディングへ一直線に繋がっている。

目に焼きついて離れない、崖から飛んだグリーンのサンダーバード……。一生忘れられないエンディングです。

こんなシーンを作れる監督、すごいな。

なにはともあれ、映画の持つ力を改めて感じました。

2024/02/27

映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』感想 ※ネタバレあり

うう、酔った……。こういうドキュメンタリー風に撮った映像って必ず酔ってしまうんだよな。

たしか有名な作品だったよなと思って観てみましたが、さもありなんですね。話題を呼びそうな映画だ。

『パラノーマル・アクティビティ』もそうですが、こういう変わった撮り方をしたホラー作品って面白いですよね。

まあめちゃくちゃに画面酔いしてはしまいますが……。

しかし結局なんの核心にも迫らないまま終わってしまいましたね。魔女とはなんなのか、廃墟となった家で何があったのか、なにもわからない。その後味の悪さもよかったです。

わけのわからない真夜中の現象の恐怖、じりじりと追い詰められる不安と焦り、そして森から出られないという絶望。これをひたすら突きつけられて楽しむ映画でした。

2024/02/23

映画『サスペリア』感想 ※ネタバレあり

1977年公開の映画で、さすがに通しで観るのがきつかったので二日に分けて観ました。最近の映画はわりとテンポがいいけど、この時代はゆったりしていてせっかちなわたしにはちょっと遅く感じてしまって……。

きれいだったなあ。女優も服もセットもバレエも雰囲気も、70年代特有のお洒落さがあって良かった。あと、人の手で作っている感じ、手作り感が逆に新鮮でよかった。

怖さやリアルさを求めてこの映画を観るのはオススメできないけど、おとぎ話として観たら楽しめると思う。

あんまり70年代の映画を観ることがないから、特に感想が思いつかないな。口をひらいたら現代の映画との差異を並べ立ててしまいそうなので、ちょっと今回は話を差し控えておこうかな?

リアルタイムでこの映画を観た人たちはどう感じたんだろう。もしかしたら衝撃的に怖くておもしろかったのかも。

今、わたしたちが観ている映画も数十年後には古い映画だと言われてしまうんだよな。

たぶん未来の映画は30分になって目まぐるしく話が展開して衝撃のラストでどんな映画を観てもそこそこの満足感をインスタントに与えてくれるものになるんだろうな。

数十年後の未来の映画を観てみたい。そして「昔の方がおもしろかった」って文句を言って若い人を辟易させたい笑。

この『サスペリア』を公開当時に観た人は、いま何歳くらいになっているんだろう。47年前に30歳だとしたら77歳? ひええ、そんなもんかあ。そう考えるとけっこう昔の映画なんだな。

なにはともあれ、そんな感想を抱きましたとさ。

2024/02/22

#1029 ルーシー・ウッド『潜水鐘に乗って』感想

わたしはあんまり最近の本は読まないのですが、これは2023年12月に刊行されていますね。

サマセット・モーム賞などいろいろな賞を受賞した小説らしいので、どれどれと思って読んでみました。

わたしたちと同じように普通に生きる人々の生活のなかに、当たり前のように不思議な存在が同居している短編集。

人魚、妖精、巨人などが生活の一部になっていて、そのなかで登場人物たちが生きている一場面を切り取った小説でした。

おもしろかったな。あんまり期待しないで読み始めたけど、それぞれの短編に架空の生物がひとつずつ出てくるとわかってから一気におもしろくなった。

しかも、その架空の生物の不思議さ、異質さを主題に据えるんじゃなくて、それはあくまで当たり前に存在するものとして描かれているんだよな。

このおもしろさ、伝わっているかなあ。

著者がイギリスのコーンウォール地方出身とのことで、その地に伝わる伝承をモチーフにしているそうです。

イギリスの伝説を現代に蘇らせた素敵な小説でした。

2024/02/18

映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』感想 ※ネタバレあり

ずっと観たいなーと思っていましたがなかなかサブスクで配信されなかったので観れなかった作品。今回ネットフリックスで配信してくれてやっと観れました。

Wikipediaを読んでみると、これってマット・デイモンが脚本を書いたのね! ハーバード大学在学中に授業で書いた脚本って……マット・デイモンってすごく頭の良い人だったんだ……。知らなかった。

バランスがいいなと思いました。数学の天才だけど不良というトリッキーな要素と、心の傷を負った人々の癒しの過程という要素。この配分が絶妙によくて、軽すぎず重すぎず、爽やかだけどしっとりとした後味の映画でした。

人物の表情をアップで捉えるシーンが多かった印象。だけど俳優陣の演技が良くてドアップにも耐えられる演技で安心して観れました。

特にロビン・ウィリアムズはよかった。助演男優賞受賞したみたいだけど、納得の演技でした。見ていて心がかすかに揺れるんですよね。今にも壊れそうな、だけど同時にどっしりとした安心感がある。

ロビン・ウィリアムズについては悲しいお別れだったのでなおさら彼が生きて演技していることに感銘を受けました……。

それぞれが過去に抱えた傷をゆっくりと確実に変化させていく過程は、よかったねという思いと共に一抹の寂しさも感じさせて、味わい深かったです。

そうなんだよね、傷って抱えているうちは痛くて苦しくて手放したいんだけど、いざ手放すとなったら寂しさもあるんだよね……。

その少しの寂しさがいい味になっていて、この映画のトーンを静謐に整えていて、ほんといいなあとしみじみ感じました。

マット・デイモンを見直した映画でした。今までそんなに興味なかったけど、ちょっと興味でてきました。

2024/02/16

映画『ボーはおそれている』感想 ※ネタバレあり

迷っている。

今日映画館で観てきた『ボーはおそれている』は……おもしろかったのか、おもしろくなかったのか。

まず言わせてほしい。

今日のわたしのコンディションは悪かった。コンタクトだったし、午前中に用事があって疲れていたし、急いで映画館に向かったから昼食を食べ損ねたし、そもそも映画館で映画を観るのは苦手だ。

そして最初から、この映画に対する期待値が高すぎたのかもしれない。『ミッドサマー』『ヘレディタリー 継承』のアリ・アスター監督への無条件の期待。それが不当に高すぎたのかもしれない。

でも、『ヘレディタリー 継承』を撮った監督だよ……? おおいに期待してしまうに決まっているじゃないですか。おもしろい映画に違いないと思ってしまうじゃないですか。

わたしはアリ・アスターを信じ切っていた。実際に映画を観るまでは……。

そして映画館で映画を観ながらわたしは思ってしまった。「おもしろくない」と。

アリ・アスターの作品が「おもしろくない」!? わたしは血迷っているのか!? これってわたしのコンディションの問題なのかな!? わたしの審美眼が曇っているの? どうなんだ――!!

だめだ。いま感想を書いたら、おもしろくなかったことの羅列になってしまう。

だけど、わたしはアリ・アスターを信じたい。この映画はおもしろくて、わたしがたまたまそのおもしろさを感じ取れなかっただけだと思いたい。

だけどなあ……。三時間もあるこの映画をわたしは「長い」と感じ「いつ終わるんだ?」と思ってしまった。

おもしろい映画なら三時間なんてあっという間に終わるし、そもそも「この映画いつ終わるんだろ?」なんて考える暇はない。

上映時間を気にしてしまう時点で、映画に没入できていないということだ。

それになあ……。この映画ってさ、たぶん、ジャンル的にホラーやサスペンスじゃないよね? 予告ではオデッセイ・スリラーとか言っていたけど、その通りなんだよな。

ホラーを求めたお客さんは肩透かしをくらうし、サスペンスを求めたお客さんは拍子抜けする。

ただただ「不安」を煽るのを目的とした作品なんだよ。それも戦慄とかハラハラとかそういう派手にドキドキさせられる類の「不安」じゃない。

何か悪いことが起こるかもしれない、という漠とした不安。それがずーっと続いていく。その不安が的中することももちろんある。だけど、カタルシスというものがないんだよな。

モヤモヤするんですよ。微細で不快な不安がモヤモヤモヤモヤ蓄積していくんですよ。

モヤモヤといえば。最後の方、ボーが屋根裏に閉じ込められたシーンがあったじゃないですか。そこで、……これ、笑っちゃうんだけど、ペニスのモンスターがいたじゃないですか?笑

あれはなに?笑 けっこうシラケちゃうくらいお粗末な造形だったのですが……あ、あれはボーの幼児性を表現しているのかな。そっか。セックスで子を成すと死んでしまうという恐怖がボーの脳裏(=屋根裏部屋の暗闇)にあるんだ。だからペニスが恐怖の対象なんだ。

そう考えると、いろいろと深く考察できるところはたくさんある映画なんですよ。ボーが発達障害とか、母親の子に対する憎しみ/子の母親に対する憎しみとか。

そうそう。そしてやっぱりアリ・アスターらしさも至る所にある。後ろの方で不気味なことが進行してたり、これっておかしいよな? ということがさも当たり前のように起こったり、何がなんだかわからないことがたくさん起こるんです。

ちゃんとアリ・アスターしてたんですよ。

でも、でも、でも……!!

最後が爆発オチってあり――――!!??

ひっくり返ったボートがもがいてもがいて、静かになって、そしてアリ・アスターの名前が出た=エンドロールが始まった瞬間、わたしはあんぐり口を開けてしまいましたよ。

え、これで終わり!? まさか、と思って辛抱強く水に浮かぶボートを見ていましたが、結局なにも起こらず……映画は終わりました。

わたしはどう受け止めていいのかわかりません。

この映画、おもしろかったの!? おもしろくなかったの!?

よし、落ち着いて。自分に問いかけてみよう。

この映画をもう一度観たいか?

…………観たい、かなー……? 確かめてみたい気持ちはある。別の日の別のわたしでこの映画を観たら、おもしろいのかどうか。

だけど、また三時間耐えられるかと言われたら……難しいかもしれない。とりあえず今すぐにもう一度観たいとは思わない。

この映画の記憶が薄れて、ある日サブスクで配信されていたら観るかもしれない。

うーん。うーん。カタルシスを与えられそうで与えられなかったこのモヤモヤがアリ・アスターの狙ったものだとしたら、それは狙い通りだ……。モヤモヤするう~~!!

なにはともあれ、そういう映画でした……。

2024/02/13

#1028 ジェラルディン・マコーリアン『不思議を売る男』感想

たぶん小学生の頃から図書館の本棚で見かけていたはずなのに、なぜか今になるまで読んだことがない本。そういう意味でも不思議だ。

児童書が好きなので図書館で本を借りるときは必ず一冊は児童書を借りています。小難しい本の息抜きに児童書は必須です。今回借りた児童書は『不思議を売る男』。原題は『A PACK OF LIES』。

おもしろかったなあ。古道具屋の品物についての逸話を語る物語。そうかと思えば意外な結末。

結末がね、ちょっと大人向けのビターな味だったよね……。あれがなかったら、無害なありきたりの児童書になっていたかもしれないね。

でもなあ。あの結末じゃない方が……物語としての完成度はあがっていたような気がするんだけど。

少なくとも、後味はまったく違ったものになっていたよね。

いや、あれでよかったのか……? でもなあ。児童書だよ? 「MCCは本当のことを言っていたんだ!」が結末でよくないか? 原題の『A PACK OF LIES』からのどんでん返しにもなるし。

二転三転するのは、ちょっと欲張りすぎたんじゃないかい……? と思ってしまうね。

だってさ、きれいな夢や憧れを素直に出せるのが児童書のいいところなんじゃないの? それをさ、MCCもエイルサも古道具屋も実在しなくて、冴えない小説家志望の中年男がそれを生み出して、最後にはそいつも消えてしまうって……。救いがないじゃん。

たしかにすごい結末だよ? 読者は驚くだろうさ。でも、その驚き、必要でしたか……? 作者の自己満足になってやしないかい?

いやいや、あの結末があったからこそ、この物語に深みが出たんじゃ……。

この物語は「うそつき」の物語だ。MCCが語るストーリーは偽りなのかそうでないのか? という「うそつき」の次元から、そもそもMCC自体が「うそつき」である小説家の作り出したストーリーの一部だった、という構造になっている。

これに面白味を感じるべきなんだろう。しかしなあ。ひとつひとつの物語が素晴らしいものだったから、そこで勝負するべきだったんじゃないかと思ってしまう。登場人物も魅力的だった。そう考えると、最後の小細工は不要だったのでは?

うーん。物語は「うそつき」が生み出す嘘だ、という作者のメッセージがあったのかな。

なにはともあれ、おもしろかったことは確かだ。

しかし考えてしまう。わたしなら、この結末にしただろうか……。

MCCやエイルサを好きになってくれた少年少女のことを考えると、この結末にはできなかった、と思う……。

こういうことを考えるのも、小説を読む醍醐味ですね。

2024/02/09

#1027 ジョセフ・コンラッド『闇の奥』感想

小説を読んでいて気に入った箇所はノートに書き写すのですが、この本からも数ページ書き写しました。

クルツの臨終の言葉、"The horror!  The horror!"「地獄だ! 地獄だ!」の箇所と、マーロウが死との格闘について語る箇所。

アフリカという闇の奥にずぶずぶとはまり込んでいったマーロウの語り。具体的なことを描写しているかと思えばよくわからないことを言い出す。記憶のもつれのようにつかみどころがない印象を持つ。

霧を掴むような印象といっしょに、アフリカのウィルダネスと叢林にうごめく現地人があざやかに眼前に映し出される。

語り口は雄弁なのに、わたしたちがそこから得られるものは少ない。まるで儲けを期待してアフリカへ赴いたマーロウがほとんど何も得られなかったのと同じように。

マーロウがヨーロッパ世界に持ち帰れたものは、象牙でも金でもなくただ記憶だけだった。アフリカの自然、さまざまな思惑で動く悪魔のような人間、クルツ、そして死の記憶。

クルツという謎の男を中心に物語は動いていくけれど、わたしがクルツについて知っていることは少ない。作中で何度も言及されたクルツの「声」、これを実際に聞かないことには、クルツのことを知ることはできないんだろうな。

クルツが死んだ後も、マーロウはクルツに忠実な男として、彼の記憶を折に触れて人に話すんだろう。だけどクルツの声を聞くものがもういない以上、それは虚しい徒労に過ぎない。

死と格闘しているんだ、マーロウは。生と死を隔てる境界を越えなかった者、その一歩手前まで行って引き返した者として、彼は死を語らずにはいられない。なぜならそれは逃れられない恐怖(The horror)だから。

なにはともあれ、おもしろかった。いろいろな読み方ができる小説だね。

2024/02/08

映画『トップガン マーヴェリック』感想 ※ネタバレあり

はあ……おもしろかった。最後の方は号泣してましたよ。熱い物語。いいなあ。めちゃくちゃ気持ちのいい映画だった。

『トップガン マーヴェリック』を観る前に、ちゃんと『トップガン』も視聴しておいたので感動がひとしおでした。

あの音楽からはじまり映画の冒頭は『トップガン』そのまま。1986年に『トップガン』が公開された当時に観た人は感動しただろうな。いいなあ……わたしも1980年代に青春を過ごしたかった……。

それにしても『トップガン』も『トップガン マーヴェリック』もトム・クルーズを楽しむ映画ですね。彼のあの眼差し……。彼が何歳であろうと心を掴まれます。

それにしても、グースの息子との確執がメインになるとは……おもしろいに決まっているじゃないですか。

なんか30年の年月を感じるいい映画だったな。それは映画内での時間もそうだし、現実での時間もそう。いろいろあったなあ……という感慨。

トニー・スコットの件とかね……。まだ最近なんだ。彼が自殺したのは……。彼に捧げられた映画だったけど……。死者は何も語らず……。わたしも語り得ぬものは語らぬがよかろう……。

しっかし、あの問題児のマーヴェリックが今度は教官になってはねっかえりの生意気キッズを教えることになるとはね笑。

マーヴェリックがチャーリーを口説いたみたいに、ハングマンたちが自分たちの教官とは知らず店から放り出して次の日にそれが発覚して「あっちゃー」となるシーンはニヤリとしたね。

戦闘機のドッグ・ファイトは前作の方が好きだったかな。でも今作では、確かトム・クルーズが実際に訓練して、他の俳優にも訓練させて本当に戦闘機に搭乗してるんでしたよね?

やっぱり命がけで撮られた映画は画面から伝わってくる緊張感が面白さを格段に引き上げる。トム・クルーズの映画への熱意が現場の士気をひっぱっているんだろうな。

戦闘の仕方がドローンへと移行する時代に、前時代の遺物だとバカにされるものが突破口をひらく。誰もが大好きな展開ですよね。

その誰もが大好きなものをきっちりと仕上げてみせてくれた映画でした。

#1026 スタンダール『河出世界文学全集 第4巻 赤と黒/カストロの尼/他』感想

毎夜寝る前に少しずつ読み進めて読破しました。二週間くらいかかったかな。就寝前の楽しみがあるっていいですね。

いやあ面白かった。文句なしに面白かった。不倫小説が読みたいなあと思って読み始めたけど、こんなに面白いものだったとは想像もしていませんでした。『赤と黒』という物々しいタイトルから想像できないくらい読みやすかった。

読みながら何度声をあげたことか……。信じられないことが起こるたびに息を飲んで「うそでしょ!?」と叫んでました。

筋書きはいたって単純なのに、どうしてこうも引き込まれてしまうんだろう。物語の力なのか、文章の力なのか……。得体のしれない力が働いて、ぐいぐいと先へ先へとひっぱられていく。古典って本当に強い力を持っているなあと感じます。

1830年に出版されたということは、200年くらい前に書かれた小説ということか。200年! 200年経ってもおもしろいって……すごいな。

スタンダールは自覚してなかっただろうな。自分が後世まで読み継がれる作品を書いたということを……。生前はあまり評価されなかったみたいだから……。発表当時、世間は熱狂しただろうと思ったのにそうでもなかったみたいだし。

ジュリアンの正義感と野心、そして周囲に対する潔癖と卑下。若い頃はわたしにもジュリアンのような要素が少なからずあったような気がするな。そしてマチルドみたいな女の子でもあった気がするし、マチルドのような女の子も知っている気がする。レナ―ル夫人のようにはなれそうもないな笑。

政治や社会情勢に対する描写もあって、作者は読者にはつまらないだろうからってできるだけそういう要素を削ろうとしていたみたいだけど、むしろあの描写があったからこそ物語に奥行きが出てよかったよな。

『赤と黒』というタイトルについて、以下解説より引用。

最後に、題名の『赤と黒』についてはさまざまの解釈がおこなわれ、「赤」を軍服、「黒」は僧衣――つまり主人公の生活方向の二つの可能性を示すものと考えるのが一番普通になっている。しかし、スタンダール自身は「赤」をもって共和主義を意味したらしい実証がある。いずれにせよ、赤は大革命後の共和政府から帝政時代へかけての英雄的な精神の横溢した活気ある時代、黒は僧侶や陰謀がはばをきかした王政復古の陰鬱は時代のシンボルと見て、この対立する二つの精神や時代を色わけしていると感じるのがよさそうである。


タイトルの意味が気になっていたので自分用のメモ。原題は『Le Rouge et le Noir』。

ちなみに、この引用箇所誤植がありません? 「陰鬱は」じゃなくて「陰鬱な」じゃないかな。誤植ってほぼ見ないからわたしの方が間違っている可能性大だけど……。

なにはともあれ、すっごく良い読書をしたなあ……。満足……。やっぱり古典はすばらしいや。

このまま河出世界文学全集を読んでいこうかなあと思ったんだけど、第5巻はポーなんだよね。ポーはけっこう読んでいるし、どうしようかなあ。

第一巻から読んでもいいんだけど、たしかダンテ『神曲』なんだよね。わたしに読めるかな……?

でも、寝る前に文学全集をちょっとずつ読み進めるのはいいかもしれない。一年続けたらどのくらい古典作品を読めるかな。やってみようかな。

よし、そうしよう。今回は文学界の巨塔『赤と黒』を制覇したので、次の巨人に挑みたいと思います。

でも、古典だけでは飽きがくるから、次はSFを読みたいな。たとえば『三体』とか全巻買ってるのに読んでいないし、というかSFの積読が多すぎて気になるんだよな。

過去の空気を吸ったあとは未来の空気を吸いますか……。ということで、ひとりでSF祭りを開催しようと思います。わくわく。

文学という世界に、わたしがまだ知らない物語がたくさん潜んでいると思うと楽しみだ。


あ、そうそう。ひとつだけ不満があったんだ。忘れるところだった。

挿絵。あれ、適切な位置に配置してくれないかな怒。どうしてネタバレになる位置に配置するの?怒 あれだけは許せない。というか挿絵いらないんだけど。挿絵のあるなしで読むか読まないか決めないだろ、『赤と黒』を読むような読者は。なんのために挿絵が必要なんだよ。納得のいく説明をしてくれよ。カラー挿絵付きという触れ込みで豪華にしたいから? 小説の内容が豪華なんだからいらないだろ。

挿絵のせいで、ジュリアンがレナ―ル夫人を拳銃で撃つ展開が随分前にわかってしまったし、ジュリアンの首を持ったマチルド(影だったけど)で何が起こるか察してしまっただろ怒。

まあ古典だし、有名な物語だから筋書きくらい知っているだろうという考えからあんな無神経なことができたんだろうけど、わたしのように無教養ながらも『赤と黒』を読んでいる読者は、次に何が起こるかわからない状態で固唾をのんで物語の行く末を追っているんだよ。初めて読む物語なんだよ。結末がどうなるのか知らないんだよ。

それだってのに……。あんな挿絵でネタバレされて……。何も知らないまっさらな状態で読みたかった……。百歩譲って挿絵はいいとしても、挿絵にする物事が起こった後に挿入してくれ、頼むから!

はあはあ……。ひさしぶりに怒ってしまった。気にしないでください。わたしはネタバレに対する耐性がなくて、ネタバレに過剰反応してしまうんです。

わたしだってしょっちゅうネタバレしてしまいますし、この記事もそもそもブログ自体ネタバレ前提ですし、自分のことを棚に上げて河出書房を怒っても仕方ないですね。

はあ。挿絵いらないなあ……。河出じゃなくて、別の全集を読もうかな……。でもなあ。村上春樹がたしか河出書房の世界文学全集を読んでいるんだよな。うう、彼が読んでいるなら読みたい……。迷うところだ……。いや、我慢して読もう……。

ネタバレを涼しい顔で受け流せるようになりたいですね。しかし、いつになることやら……。やれやれです。

2024/02/04

映画『オーメン666』感想 ※ネタバレあり

この映画のリメイク元になった映画『オーメン』観てみたいな。オリジナル『オーメン』のWikipediaを見てみると、なにやら制作陣にいろいろと不幸が降りかかったみたいですね。

オリジナルを観ていないのでリメイク版との比較ができないのが残念。

この映画単体で評価すると、ホラーとして優等生的なおもしろさだった。非常に上品に丁寧に作られていた印象。

画面のライティングや構図が美しかった。リメイク元に対するリスペクトなのかなあ。だとしたらなおさらオリジナルを観てみたい。

ホラーなのにスタイリッシュで洗練されていてよかった。ホラーってともすると下品で滑稽になりがちじゃないですか。なのにこの作品はそうならないように細心の注意を払って作られている。

筋書きもよかった。なるほどね、海=政界から反キリストが生まれると……。これも原作準拠なのかな?

ロバートの名付け親(ゴッドファーザー)が大統領だから、ソーン夫妻亡き後のダミアンは大統領が面倒を見ることになったのは面白いよね。冒頭でサラリと言われていたセリフがラストの伏線になっていたとは。

海外ドラマを観ているおかげでゴッドファーザーが両親が死んだ時の後見人っていう知識を得たんだけど、もし知らない人がいたらラストは「?」な状況なのかな?

なにはともあれ、ダミアン役の子役もなかなか不気味な演技だったし他の俳優陣も好演していて全体的にまとまりもあっていい映画でした。

ただ、新奇なものやド派手なものを求めている人にはちょっと退屈な映画かもしれない……。ドロドロビクビクハラハラギャーッみたいなホラーを求めている人にはオススメできないかな。笑

ジェーン・オースティン『いつか晴れた日に』感想

やっと読み終わったー……。時間かかったなあ。 ジェーン・オースティンの作品は『 高慢と偏見 』と『 エマ 』しか読んでなくて、その二つがとてもおもしろかったから『 いつか晴れた日に 』を読んだんだけど。 なんというか、先述の二作品が作家として成熟した時期に書かれたものなんだろうな...