2024/01/25

映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』感想 ※ネタバレあり

ジョン・ウィック……。これで完結か……。4作目まで楽しめる映画ってなかなかないよね。稀有な映画です。

169分もあるのか。ずーっとハラハラして集中して観ていたから観終わってこれを書いている今、すごく疲れてますけど、満足です。

でも、本当にこれで完結なのかな? エンドロールのあとに流れたケインとアキラのシーンとかすごく中途半端に感じたし、そもそもジョンが死んでいるという確証がない。

もし続くのならすごく嬉しいけど……無理かなあ。キアヌ・リーヴスももう歳だしなあ。

でもさ、このジョン・ウィックという役柄、キアヌじゃなかったらすごい反感を買いそうだよね。

だってジョンが助けを求めた人たち全員がなんらかの多大な不利益を被っている。

本当に厄介な死神みたいなやつで、本当なら迷惑極まりないやつなのに、キアヌの人柄か演技力の賜物か悪感情を抱かないよね。

まあアクション・シーンの完成度の高さですべてをねじ伏せられるよね。はい、降参です。アクション・シーンがこれほど面白い映画、他にないもん。

今回のアクション・シーンもおもしろかったなあああああ。毎回毎回、「もうこれ以上面白くならないだろ」を超えてくる。どういうことなの?

ジョン・ウィックのアクションって重いんだよね。一撃一撃が重い。他の映画が軽く感じるくらい。本当のぶつかり合いをしているように見える。本当の戦闘ってこんなふうなんだろうなあって解像度があがった。

重い身体を重い身体にぶつける。動物のような唸り声をあげて、もんどりうって転がり回って、渾身の力で相手にとどめをさす。何度も倒れて全身に衝撃を受けて、足を引きずりながら歩を進める。

今まで観てきたアクションがいかに軽かったかのか、ジョン・ウィックで知った。

あと、本当にアクションを撮るのが楽しそうなのがいいんだよなあ。アイディアがめちゃくちゃいい。

大阪コンチネンタルでの戦闘も弓で射られた死体のぶら下がり方とかそういう細かいところまですっごく楽しかった。

ナイトクラブでの戦闘もジョンとケインとトラッカーの共闘がいい感じだったしなによりキーラがあの巨体であの俊敏さが意外だった。

エッフェル塔のシーンもよかったああ。どんどこ人が車にひかれていきながら銃撃戦を繰り広げるなんてわたし初めて観ましたよ。

そして決闘の夜明けまでにジョンを殺そうと追う者たちとの戦闘。特に印象に残っているのが、古い家での戦闘シーン。間取りを上から見下ろした視点から撮っていたのがすごくおもしろかった。あの火花が出る武器、派手でいいね。

そして絶望の階段のシーン……。ここは言葉にするまでもないね。途中でケインが現れたのも犬の復讐ができたのもよかった。

アクション・シーンでもう本当にほれぼれするのが、ジョンの銃のリロードの速さね。バスが通り過ぎる瞬間にリロードしたところなんてもうかっこよすぎて……。リロードはロマンだ。

それにしても、最後の戦いが古き良き決闘とはね……。天才か?

西部劇を思わせる、今までの戦闘シーンにはない種類の張り詰めた緊張感。美しい寺院と朝日のなかで古き因習に則って行われる男の戦い。

そしてデウス・エクス・マキナを思わせる美しいラスト。ジョンもケインも支配人も自由になり望むものを手に入れた。

だけど、ジョン……。戦いが終わったのに、死んでしまったのか……?

それとも、また復活するのか……。

なにはともあれ、ジョン・ウィックは伝説になった。今はそれだけでいい。うん。

#1025 吉本ばなな『吉本ばなな自選選集〈3〉Deathデス』感想

吉本ばなな自選選集のオカルト、ラブに続きデスを読みましたが、巻をおうごとに面白く感じたな。

デスの次はライフらしいので、そちらも読んでみることにしよう。

吉本ばななの描く「死」は、秋の空のように突き抜けてて哀しくて寂しいですね。

その人がいた空間にぽっかりと空いた空白。それは生身の身体だけじゃなくてその人が纏う空気や記憶、過去や未来まで含めた空白。

その空白に苦しむ話もあれば、生きるということが苦しすぎてそこから突き抜けようと死へ向かってしまう話もありました。

大切な人の不在があり、その周囲にいる人々が戸惑いながら寄り添い、その悲しみを見つめ、自分のなかに抱え込む。そしていつかちがう自分でちがう視点からその死を見られるようになれるよう祈る。

そのやり方が吉本ばななの小説の登場人物はあっけらかんとしていて、でもとても切実で、息が詰まるように苦しいけど、でもどこかに希望のうすぼんやりとした光がある。

わたしは大切な人を亡くした経験はないけれど、もしそれを経験したら、吉本ばななの小説はどういうふうに感じるんだろうな。

ぼけっとしたわたしはほとんど意識することがなかったけれど、わたしのまわりにも死の影が漂い始めたのをこの歳になって感じている。

一月二日に昼寝をしていたら、家族に関する濃厚な夢を見て、「これは家族の誰かに何か起きるかもしれない」と思い、昼寝から起きてすぐに喪服を買いにいきました。

結局その夢は家族に関する吉兆だったのだけれど、でもそういうふうに、家族もわたしも死のすぐ隣で生きているんだ。

まだ現実感の伴わない死。それがわたしの人生にいずれ必ず関わってくる。それは周りの誰かかもしれないし、他ならなぬ自分かもしれない。

でも今はそんなこと忘れよう。死はわたしにはとても抱えきれないから。そのときがくるまで、忘れて生きていこう。

2024/01/23

映画『コンテイジョン』感想 ※ネタバレあり

ちょっとまって。この映画、コロナ禍の前に撮られた映画だったの!?

てっきりコロナのパンデミックを下敷きにして制作された映画だと思った。

そうなると、面白さの度合いがかなり変わってくる。

コロナ騒ぎのあとに撮られた映画だと思っていたから観ている最中はそんなに面白さを感じなかった。だって実際にあのパニックを経験したあとであの映画だとインパクトに欠けると思ったから。

だけどコロナ前に撮られた映画だとしたら、よく取材して撮られているとわかるし、リアリティに富み、しかも予言的映画であると言える。

人々がパニックに陥りデマが飛び交い暴動が起きて治安が悪化する。街から人が消え青春は牢獄のなかに閉じこめられる。

これらの現象を予測することができていたんだ、2011年の時点で。

そうか……だからなんだか決定打に欠ける映画だなあと思ったんだ。今回のコロナにまつわる様々なことへの痛烈な批判や真実を暴こうという気概を感じなかったのは、まだ現実にはなっていないことを映画にしていたからなんだ。

最初からコロナ前に撮られた映画だと知っていれば二倍楽しめたのに!

わたしは数字に極端に弱いので何がいつ起きたかとか、最近の出来事でもわからないので気付かなかった……。コロナ禍が西暦何年だったかとかちゃんと覚えていないし……。

なにはともあれ、すごい映画だった。予言映画だ。虚構の持つ力を実感した映画でした。

2024/01/20

#1024 丸谷才一『月とメロン』感想

軽く読めるものが読みたくて図書館で見かけて借りてきました。

丸谷才一さんの本は、言うのも恥ずかしいのですが読んだことがなく……ぶっちゃけ有名な人ということしかしりません。

文語で書かれていて扱っている内容もけっこうお堅い話題ばかりだったのに、彼の軽妙な語り口のおかげでスラスラ読めました。

内容も面白いし適度に高尚で適度に低俗なので読みやすかったなあ。ただ、一般女性が興味を引く話題というのはあまりなかったですね笑。

出版社の社史とか昭和史とかに興味のある一般女性がいたらこの本をオススメします。

ただ、この本にでてきたデズモンド・モリスの『裸のサル』と『マンウォッチング』『ウーマンウォッチング』は見かけたら読んでみようかな。

特に面白くて覚えているのは、ゲイは見ただけで相手がゲイだとわかる理由。それはゲイのコミュニティに属することで同化作用が働き、集団の行動がだんだん似てくるということでした。

他にも「ネオテニー」の話とか面白かった。

わたしも小説ばかり読んでいないで、もっと史実や科学に基づいた本を読んでいこう。

映画『ブラックホーク・ダウン』感想 ※ネタバレあり

お、おもしろかった……。監督リドリー・スコットなのね。納得しました。

わたしはミーハーなので戦争ものの映画に特に入れ込んでいるというわけではないのですが、制作側が気合を入れて作った作品が多いので、結果として名作になり好きになるというパターンが多いですね。

『フルメタル・ジャケット』とか『ダンケルク』とか好きです。特に『フルメタル・ジャケット』はいつか記事に書きますが、いろいろと言いたいことがたくさんで大好きです。

ブラックホークが撃墜された場面では、泣くシーンでもないのに涙がにじみました。なんちゅうすごいものを見せてくれているんだ……という感動。

名作映画って、場面のひとつひとつがグイグイと脳に刻み込まれていく。登場人物の所作のひとつひとつがしっくりと感情になじむ。

日々の雑事や批評的視点なんて放棄して、何も考えずに映画に熱中できました。

なぜあの戦争にアメリカが介入しなければならなかったのか、そこらへんのことはわたしにはわかりません。そのわからなさがどうしようもなく虚しさを感じさせて、最後の遺体が並んだシーンではなんともいえない気持ちになりました。

ガリソンが兵士の治療中に流れ落ちた血を拭うシーンがあったけど、あれはガリソンがあの一連の作戦の全責任を負ったという暗喩だったんだな。

アイディードが戦死した翌日にガリソンが退役したというのは、やはり悔悟があったからだろうか……。

兵士も兵士の家族も、それが任務だからという理由だけでお偉いさんに地獄に送り込まれて、どういう気持ちでいるんだろう。

「なぜ?」が積み重なっていく。戦争というものに対して、わたしは途方に暮れて「なぜ?」と問うしかありません。

この映画は良すぎて語ることができない……。

無駄なことは語らず、黙って二回目視聴します。

2024/01/17

映画『INTERCEPTOR/インターセプター』映画 感想 ※ネタバレあり

ネットフリックスの映画って面白すぎないから、気力のないときに観るのにちょうどいいんだよな。

監督も脚本もしっかりじっくり練られてて撮影も命がけでやってる映画を受け取る余裕のないときに、リラックスして観られる。

この『INTERCEPTOR/インターセプター』もちょうどよかった。今、咳の症状に数週間苦しめられていて疲れているんですよね。

なのでこの映画も観るのに三日くらいかかったんじゃないかな。一気見できるほどには引き込まれなかった。

主演の女の人が鍛え上げてるのが好感が持てた。ウィキペディアを観ると、なんとクリス・ヘムズワースの奥方だというではありませんか。

ヘムズワースがトレーニングを手伝ったらしいですね。いい筋肉にしあがっていました。そして意味のないヘムズワースの無駄遣いの謎が解けた笑。

ちょっと安っぽいセットであまりお金がかかっていないのが丸わかりだったけど、後半の追い上げではちゃんとハラハラしましたし、悪人の最期にはちょっとニヤリとしました。

もうちょっと元気なったらネトフリ制作映画じゃなくてちゃんとした映画が観たいですねえ。

#1023 スティーヴン・ミルハウザー『三つの小さな王国』感想

相変わらずのミルハウザー劇場。すごく良かった。

どれも本当にあったことのように細部まで緻密に(緻密すぎるほどに)描写されるのに、徐々に現実味を失っていく。

フランクリンの描くアニメーションは描けば描くほどに突き詰められて細緻になるのに、どんどん幻想じみていく。

王妃をめぐる物語は登場人物の心情の機微が微妙になって複雑になっていくのに、どんどん寓話的になっていく。

ムーラッシュの描く絵画は晩年の作品になるごとにどんどん想像を超えてイマジネーションの影のようになってしまう。

芸術の極致とその崩壊。ミルハウザーがくりかえし小説で描くこのテーマ、どうしようもなく好きなんですよねえ。

オブセッションっていうのかな、そういうのがある作家が好きなんです。

村上春樹でいえば「井戸」とか「穴」。押井守でいえば「鳥」とか「バセットハウンド」。

ミルハウザーも「緻密さが極まってそれが極致に達したとき、崩壊する」という同じ型を使って何度も小説を書いていますよね。

『マーティン・ドレスラーの夢』とか『ナイフ投げ師』のなかの数篇とか。

あとミルハウザーは「伝記もの」がありますね。『エドウィン・マルハウス』とかね。

まるで記憶のなかのシーンをそのまま見て、そのままひとつひとつを省略することなく描写していくような書き方。

ひとつひとつ羅列していくようなやり方、すぐに飽きてしまいそうだけどミルハウザーだけはまるで魔法がかかっているようにそれがおもしろい。

稀有な作家だよなあ……。

次は『バーナム博物館』を読みます。

たのしみ!

2024/01/14

映画『イン・ジ・アース』感想 ※ネタバレあり

なかなか面白かった。後々まで心に残る映画かと言われるとそうではないけれど……。

とりあえず思ったのは、マーティンが散々痛い目に遭っていてかわいそうだった。アルマがあまり痛い目に遭わなかったのはホッとした、というところかな。幼稚な感想で申し訳ない。

それにしても、どんな映画かわからずに見始めて、観終わったあとでもよくわからない映画だな。

パンデミックの映画かと思ったらそれが主題でもないみたいだし、森の精霊崇拝の話かと思ったら科学的に接触を試みるSFっぽくもあるし。

それらをミックスしたホラー作品で、わりとうまくまとめられていたと思う……けど、後味の悪い映画だなあ。後味が悪いから面白くない映画かといえばそうでもないけれど。

けど、わたしみたいに漫然と観た人間にはいまいち意味がわからない映画だったな。オリヴィアとザックが交信しようとしていた森の精霊?のこともよくわからないし。

たぶん字幕で観たからだろうな。英語だともうちょっと詳しく説明していたんだろうけど、イギリス英語って聞き取りにくいんだよな。

今日は疲れていたからあまり面白すぎない映画を観ようと思って選んだ映画だったんだけど、ちょうどよかった。

適度にハラハラして適度に眠くなり適度に納得して適度に意味わからない。今の気分にはちょうどいい映画だった。

2024/01/13

#1022 L・M・オールコット『若草物語』感想

福音館古典童話シリーズで読みました。好きなんですよね、このシリーズ。

『若草物語』、期待していた以上によくて驚きました。とても面白かった。本当に好きな本になりました。

イイコのための教訓に溢れた本だと思っていたのに、軽妙な語り口で魅力的な登場人物がたくさん出てきて感動して学びもあって……。本当に素晴らしい小説でした。

そしてこの物語が特別な理由はもうひとつあって、実はわたし、四人姉妹なんですよね。しかも次女なんです。この物語はジョーが引っ張っていく物語だったので、読んでいて誇らしく嬉しい気持ちになりました。

それに、うちの姉妹って『若草物語』の姉妹と性格もちょっと似ているんです。

長女はメグみたいに美人で、いい人を見つけて一番に結婚しました。次女であるわたしは小説を書いているし、三女はおしとやかでピアノが好きで、四女は流行に敏感でおませ。

まあうちの四姉妹はマーチ家の四姉妹とは違ってたくさん問題アリですが……。

作者のオールコットも四姉妹だったとあとがきに書いてあって、しかも次女で小説を書いて一家を支えたとのことで、さらにこの物語が好きになってしまいました。

この物語、続きがあるそうなのですが、読んでみたいような怖いような……。

だってだって、もしローリーがジョー以外と結婚しちゃったりしたら、もうわたしは心が引き裂かれてしまいますよ。

そこだけでもネタバレしてほしい。それで読むのを決める。

ーーー検索中ーーー

ちょーっと! ちょっとまって! いま調べたら、ローリーはエイミーと結婚するんだって!

ああ……読むのやめます。いや、読みますけど、この心の傷が癒されてから読みます。

はあああ……。ジョーの結婚話が読みたいから読むけど……。はああああああ……。

エイミーかよ。せめてベスでしょ! そうだよ、ベスならローレンス老人も大喜びだったんじゃないの!?

うわああああショック……。

このショッキングな出来事については、しばらくそっとしておきます……。

はあ……ローリーとエイミーねえ……。

読んでみたら納得するのかなあ。

はあ、しばらくひきずります……。

#1021 『ひとつ、むらかみさんで やってみるか』感想

 「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?

この本の正式名称ですね。長い! このシリーズの名前は覚えられない。

質問もどんどん多くなってきて、今回の本は読むのに時間がかかりました。

この本が発行されたのは2006年。なんだか、のんびりした良い時代だったんだなあと思いました。

質問の選定基準がそうだとは書かれていたけれど、のんびりしたゆるい質問が多くて読んでて癒されました。

まあたまにはまじめな質問があったりしてそういう場合は村上春樹もきちんと答えていたけれど。

村上春樹のことが大好きな読者たちがルンルンでメールを出して、それに対して村上春樹がのらりくらりと返答するという素敵な本でした。

メールを送ってくる読者さんたちの文面がかわいいんですよね。擦れていないというか。今のインターネットにこの文面で書いたら「古い」とか「痛い」とか言われそうな文章で。

比較的最近に書かれた『村上さんのところ』を読んだあとだったので、読者が送ってくるメールにギャップを感じました。

『村上さんのところ』に送られてくるメールはみんな暗くて真面目でそつのないメールという印象があります。

それに比べたら、この「ひとつ、村上さんでやってみるか」は村上春樹にも茶目っ気があって適当にくだらなくて最高でした。

この本が発刊されたのは今から18年前か……。世界がこんなふうになっていくなんて、だれが想像できただろう。

この本のすごいところは、ところどころに村上春樹が本を書く理由みたいな重要な情報が書かれているところですね。

そういう重要なところだけ覚えていたいけど、いかんせん情報量が多すぎてすぐ忘れてしまいます。

まあいいか。

今度は『少年カフカ』を読もうと思います。その前に『海辺のカフカ』を読み返したいな。

2024/01/11

致命的な盲点を発見しました。

わたしはこの本と映画ブログを完全に個人的な観点から書いています。

なので、おもしろいかおもしろくないか、わたしのものさしで測っているんですよね。

まあ本も映画もそれなりの数観てきたし、けっこう公平な評価ができるんじゃないかと思っていたんですが、それは大きな思い上がりでした。

わたしは感想を書くとき、他の感想を読んだり他の意見を聞いたりせずに書いています。

けれど会話のなかで映画の感想を言い合ったり、SNSで感想を見かけたりすることがあるんですよね。

それで気付いたんですが……。

わたしは映画のなかの「家族との心の通い合い」「人と人との関係性」みたいなものに価値を見出せていなかったんです。

そこを面白ポイントとして加算することをしていなかったんです。

なんということでしょう。

それに気付いたのはふたつの映画の感想を聞いたり見たりしたことがきっかけでした。

『エブエブ』についてあるお方とお話していたときに、その方は「ウェイモンドが次元を超えてエブリンを愛しているのが感動した」と仰っていたんです。

わたしはその点に全く注意を払っていなくて、それを聞いた時に目から鱗が落ちたような気がしました。

たしかにそれって考えてみるとめちゃくちゃ感動的じゃん。だけど、今までそれに気付かなかった……。

あとひとつの映画は『M3GAN』。SNSに感想が書いてあり、その人は親と子の関係性やアンドロイドと子の関係性におもしろさを見出していました。

たしかにそうじゃん……。そこに注目してみるとまた違った面白さがあるのに、わたしはホラーとして面白いかどうかで判断していた。

まあ、仕方ないことではあるかなあと思います。

わたしは両親に愛を感じたことはないですし、きょうだいに対しても壁があります。一応トータルで好きではあると思うんですけどね。でも愛や情というものがわかりません。

どこまでも孤独な人生です。わたしの世界にいるのはわたしのみ、それ以外は異物、ただ孤独だけがわたしに寄り添っている。それだけで生きてきました。

なので、わたしには致命的な盲点があるのでしょう。

心が石になって死んでいるところ、脳のシナプスが極端に薄いところ、魂が一部欠けているところ。それがわたしのなかにあります。

まあ、人生ですもの、そういうこともありますよね。

わたしはこれからも自分の観点からしか物事を見ることができません。

偏った映画評や書評を続けていくのでしょう。

でもそれでいいのかな、それしかできないな、と諦めます。

これからもこのブログは偏った個人の思考によって運営されていくことを表明いたします。

それでは。

映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』感想 ※ネタバレあり

ネットフリックスで目についたので観てみた『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』。

これは……おそらく原作があるのかな? 原作ファンにはとても楽しい映画だろうけど、わたしのような原作を知らない勢にはふつうのド直球王道ファンタジー映画でした。それ以上でも以下でもないかんじ。

あまりにもド直球王道ファンタジーすぎて逆に面白かったかな。なんかメタ的などんでん返しがあるのかなあとちょっと期待したのですがそれもなく……。

だけどゲームっぽい世界観で作られた映画を観るのは楽しいですね。わたしはゲームをしないので、ゲームってこんなかんじなのかなという感覚を経験できました。

キャラクターも全員魅力的だし、台詞回しも小気味でいいし、ギャグもおもしろいし、シリアスの塩梅もいいし、お手本的におもしろい映画でした。

ただ、お手本映画に飽きちゃうわたしは三日かけて少しずつ観ました……。

だけど俳優陣が全員良かったなあ。特によかったのがソフィーナ。狂気の目してましたよね。まじで怖かった。

魔法の表現もおもしろかった。女性陣もいろんな良さがあったし。ホルガもドリックもよかった。

デブのドラゴンも変わっててかわいくておもしろくて良き。

全体的に平均的におもしろかったです。

これ、原作勢からしたらめちゃくちゃ面白いんだろうなあ。

原作勢の感想を聞いてみたいですね。

映画『M3GAN』感想 ※ネタバレあり

予告でのミーガンの奇妙なダンスが面白くて、配信されるのを楽しみに待っていた『M3GAN』。

感想としては……。うーん。この映画、アリ・アスターの『ヘレディタリー 継承』のあとに観たんですよ。数日空けてですけど。

『ヘレディタリー 継承』を観たあとだと、ちょっと安っぽく感じてしまって……。

驚きがなかった……。ただただ、ミーガンというちょっと不気味なAI人形が予想の範囲内のことをしていくだけ。

あの予告に使われていた奇妙なダンスも、映画本編だとほんの一瞬だしそもそもどうしてあそこで踊った? という疑問が湧くシーンになっていて……。

映画のことをあまり悪く言いたくないけど、この映画、褒めるところを見つけるのに苦労してしまいます。

あのミーガン役の女の子の驚異的な身体能力には目を瞠るものがありますが、それに頼りすぎじゃないでしょうか。

怖いシーンに関しても、もっと本気を出せば怖くできたんじゃないかという疑問も残ります。森の中でいじめっ子の男の子を追いかけるシーンとか、もっと上手に撮ればもっと怖くできたんじゃないでしょうか?

気に食わない犬やおばさんを次々殺していくのはスカッとしますが、わたしはスカッと映画ではなくてホラー映画を求めているんです……。

この映画ブログ、観終わってから感想を大体書くようにしているのですが、『M3GAN』は感想を書く気になれなかったです。書くことがなさすぎて。

脚本も撮り方も大人しすぎるという印象を受けてしまった。ホラーなんだからもっと狂気が欲しかった。「観客を怖がらせてやるぞ!」という意気込みが欲しかった。これはわたしのワガママか……。

ホラーなのに大人しい印象を残すだけの映画となってしまったかんじがあります。

妹から聞いたのですが、「ホラーとギャグは紙一重」という言葉があるそうです。たしかにそうですよね。

この『M3GAN』という映画は、ギャグに走らないよう慎重になった結果、ホラーとも言えない映画に着地してしまったのかなあと想像したりします。

ミーガンの見た目とかテーマとかキャッチーで最高なんですけどね。はあ、もったいない……。

誰か『M3GAN』のおもしろさをたくさん語れるという方がいたらぜひ連絡ください。わたしもこの映画のおもしろさをたくさん見つけたいから……。

なにはともあれ、『M3GAN』はわたしにとってはちょっと残念な映画でした。期待が高すぎちゃったのかな……。

2024/01/05

映画『ヘレディタリー 継承』感想 ※ネタバレあり

アマプラで一度観てからもう一度観たくて観たくて、ふと探してみたらあったのでさっそく観てみました。

ということで、新年一作目の映画はアリ・アスター監督の『ヘレディタリー 継承』となりました。

名作のすごいところって、大体のシーンを覚えているところですよね。

駄作だと「こんなシーンあったっけ?」となるのですが、名作だとすべてのシーンに見覚えがあってそれをちゃんと時系列で覚えています。

一回目に見たとき、ありきたりなホラーに飽き飽きしていたところでこの作品を観たので、まじでひっくり返るどころか凍りつきました。

なんだこの身に覚えのない恐怖は……。

ありがちな恐怖アイテムや恐怖シーンからすべて逸脱している。

人間の見得る限り最悪の脈絡のない悪夢。それが映画として結実している。

アニーが完全に壊れてしまってからのシーンの連続は戦慄しました。本当に画面から目が離せなかった。

人間があんな恐怖を想像しうるものですかね?

疲れ切って起きたら、見慣れた自分の部屋の上の隅に母親(らしきもの)が潜んでいる。

それが音もたてずに天井を横切っていく。それは自分を見ている。

家を取り囲む全裸の男女……。

屋根裏の扉に頭を打ちつける女。

家に入り込んでいる見知らぬ人々。

空中に浮かんだ自分の首を刺す女。

首を刺す音がどんどん速くなっていく……。

悪夢。これ以上ない悪夢です。

そして身体を奪われ、いつのまにか絡め取られていた悪魔崇拝の依り代として祀り上げられる。

作品全体を覆う不気味さに下品さはなくて、驚かせてやろうという魂胆も見えない。

ただただ悪夢を淡々と見せられる。

こんな上質で最高に怖いホラー作品が過去にありましたか?

『エクソシスト』くらいしか今は思い浮かびません。

やはり名作は何度観てもいい……。

そう思わされました。

アリ・アスターは天才だ。

#1020 湊かなえ『告白』

新年一冊目に読み終わった本は湊かなえ『告白』でした。

有名な本ですね。いまごろになってやっと読みました。

感想はおおむね面白かったです。面白さがぜんぶ本に書いてあったのでここでこれ以上言うことはあまりないかな、というかんじです。

一般の人がこれを読んで思うであろうことをそのままわたしも思い浮かべたので、わざわざここに書くこともないかな。

おもしろかったですよね。特に最後はスカッとしました。

大人があれだけ大人げなく子どもに復讐するのっていいですね。

そういうみっともなさや惨めさ、そして復讐の醜さがよく出ていて楽しめました。

映画化もしていましたよね? 映画映えしそうな本だと思いました。

話題になった作品は面白さがわかりやすくて体力気力がなくても読めるのがいいですね。

やっと読めてすっきり!

2024/01/01

2024年あけましておめでとうございます。

いやあ、明けましたね。

今年は特に希望もなく絶望もなく、元気だけどそこはかとなく疲れている、そんな微妙なかんじではじまりました。

そうはいっても新年ですので、気合を入れていろいろと考えたいですね。

今年の目標、達成したいこと、やりたいこと、計画などなど……。

まず絶対に達成したい第一の目標は、映画1000本達成することです。

現在892本観ているのであと108本。煩悩の数みればいいというわけですね。これは簡単に達成できそうです。月に10本観ればいいだけですから余裕です。

次に、今年の5月までに小説を完成させる。例のあの小説です。160万字の10年書き続けているやつです。

この小説を書き始めたのが2014年の5月なんです。つまり、5月を過ぎてしまうと11年目に突入してしまう。キリがいいのが好きなので、10年で終わらせたいです。なので、はじめて締切を設けて小説を書いてみます。

もうこれだけは絶対に絶対に自分の人生をかけてでも達成します。他のことは二の次です。日中は小説を書き、日が沈んだら絵を描くという生活をしようと思います。

絵ももう少しうまくなりたくて、次は背景込みの絵を描けるようになりたいです。漫画も描けるようになりたいのですが、これは本格的に勉強するのは小説を書き終わってからにしたいですね。

自分としては去年の成果にけっこう満足というか、まあこんなもんかなと思っています。ゆるくやってきて疲れずに無理せずにやってきました。

でも今年は、ちょっと力を入れたいですね。少し無理もしてみたいです。これからどんどん無理できないようになっていくでしょうから。

さて、有言実行するために、小説を書いてきます。えーっと、5月1日が締切だから、あと四か月……四か月!? たった四か月!?

やらなければ! 自分を信じるために! これができなかったら、一生自分を信じることができなくなる。

ごちゃごちゃ言ってないで、黙ってやります。
いってまいります。

ジェーン・オースティン『いつか晴れた日に』感想

やっと読み終わったー……。時間かかったなあ。 ジェーン・オースティンの作品は『 高慢と偏見 』と『 エマ 』しか読んでなくて、その二つがとてもおもしろかったから『 いつか晴れた日に 』を読んだんだけど。 なんというか、先述の二作品が作家として成熟した時期に書かれたものなんだろうな...