2024/05/27

アーサー・コナン・ドイル『四つの署名 新訳シャーロック・ホームズ全集』感想

ほうほう。なんかめっちゃおもしろかったぞ。書かれた順番としては『四つの署名』が二作目らしい。なるほど。まだ筆がのっている時期に書かれたからか、ホームズもワトスンも生き生きとしている。

『緋色の研究』を読んだときにも思ったんだけど、もしホームズをまとめて読もうと思うなら短編からじゃなくて長編から始めた方がいい気がする。

光文社のホームズ全集の順番どおりに読んでるんだけど……。ちなみに順番は以下の通り。
  1. シャーロック・ホームズの冒険
  2. シャーロック・ホームズの回想
  3. 緋色の研究
  4. シャーロック・ホームズの生還
  5. 四つの署名
  6. シャーロック・ホームズ最後の挨拶
  7. バスカヴィル家の犬
  8. シャーロック・ホームズの事件簿
  9. 恐怖の谷
あー、いやでも、むしろ長編がおもしろいから、短編にすこし飽きたころに挟むことで興味が持続できるか。よく考えられてるなあ。

たしかに、短編をまとめて読んだあとで初期の長編を読むと初心に帰った気がしたものな。

この光文社の全集は注釈が地味におもしろい。他の全集でもこんなにおもしろいのかな? いつか他のホームズ全集も読んでみようと思ってるから比較してみよう。まあ他の全集を読むとしたら十年後とかになりそうだけど。

ホームズの小説はいまのところどの短編も長編もおもしろいからすごいと思う。

はやく全部読んでみたい。

ダレン・シャン『デモナータ 7幕 死の影』感想

今回はベックが主人公。相変わらずおもしろい。

つくづく悔やまれるのが、伏線があるみたいなのにそれを全然覚えていないことだ……。15年ぶりにシリーズを読み進めているからなあ。仕方ないか。

やっぱりダレン・シャンって残酷な運命に翻弄される少年少女の心理描写がうまい。平易な文でスルスル入ってくるのに胸を抉る。

『ダレン・シャン』のクレプスリーといい本作のダービッシュといい、主人公を庇護する大人のキャラクターがいいよね。性格ひねくれてるけど信念は真っ直ぐで、たまにダメになる等身大の大人ってかんじ。

主人公を導くメンターの役割をするキャラクターがどういう人物かによって、物語の面白さが左右されるといっても過言ではないと思う。

メンターをただの「立派な完璧人間」や「作者の代弁者 and/or 理想像」にしないようにしないとな……。気をつけよう。(先日読んだ本を思い浮かべながら)

そういう意味では今作の人間味あふれるダービッシュの凋落ぶりはよかった。読んでいて辛いものがあったんだけど、これがリアルだよな、大人だってボロボロになってしまうこともあるよな、って納得できた。

次々と敵があらわれ主人公側が追い詰められていく展開のおもしろさはもちろん、登場人物の苦しみや葛藤が鮮やかに描かれているところがダレン・シャン作品の醍醐味だよな。

それにしても……敵の正体が明らかになったわけだけど、こんなに大風呂敷を広げて大丈夫か……? と心配になる。さしものダレン・シャン氏もこれを大団円に導くのは難しいのではないだろうか……。

すこし不安はあれど、とりあえずダレン・シャンの手腕に大いに期待して読み進めていく。

2024/05/21

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』感想

え、すご。すごくおもしろかった。めっちゃ期待していたけど期待を裏切らないおもしろさだった。期待しすぎてすぐには観れないくらいすっごく期待値高かったのに、それを軽く超えていった。すごすぎ。

全編クライマックス。怒涛の展開、色の洪水、めまぐるしいアクション。スパイダーバースで新次元を拓いたと思ったけど、さらに次元展開していた。もう視聴者を置き去りにしかねない勢い。

実写も出てきてお祭り騒ぎじゃないですか。ヴェノム(トム・ハーディ)とスパイダーマン(トム・ホランド)の共演を心待ちにしている身としては、あの中国人のおばさんがやってるコンビニが出てきてうれしかった。

あまりにも情報過多でちょっと息切れが……。旧弊な脳みそのわたしには荷が重いよ。新しすぎる。目がチカチカしちゃって。

うわあ、思い返してみるとトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドがちらっと出てましたね? トム・ホランド版で集結したときも盛り上がったけどまさかアニメにも出てくるとは。

そして恥ずかしながら今更気づいたけど、グウェンって『アメイジング・スパイダーマン』でエマ・ストーンが演じたグウェンと同じ名前……? 逆になぜ気づかなかった?

グウェンとマイルズが逆さになってグウェンの運命について話しているときにわかりそうなものだけど、そのときはわからなかった。

本作のグウェンがビルから落下してそれをマイルズが助けようとする場面でやっとわかった。なぜこの落下シーンが印象に残るように作られているのかな? って思ったらそういうことか。

そうだよね、グウェンの落下は全スパイダーマンファンのトラウマと言っていいだろうからね……。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でトラウマはある程度癒されたけど……。

というかわたしは実写のスパイダーマンしか知らないけど、もしかしてコミックやらゲームでたくさんのスパイダーマンが生み出されている?

なら「もう逃げ場はないぜ」って言った白いスパイダーマンもなんかの作品だったりする? あのスパイダーマンが刺さりに刺さってしょうがないんだけど。調べようにもなんと調べたらいいのか……。まあいい。

笑ったのがスパイダーマン同士が「You?  You?」って指差しあうやつ笑。そこでそのミーム使ってくるんだ笑。思い出しても笑える。

個人的に嬉しかったのがペニーの再登場。顔つきが悲愴なロボアニメの主人公になっちゃってて日本リスペクトを感じて燃えた。そうこなくっちゃな……。

セリフも気が利いてるしグラフィティアートと油彩が混じったような画面作りも尖ってるし斬新な構図も目新しいし、アニメーションの最先端な気がする。

次作のビヨンド・ザ・スパイダーバースが楽しみすぎる。でも、これを超えるのは難しいのでは……。いや超えてくるとは思うけど、前衛芸術っぽくなっちゃいそうな気がする。

エンタメの域を超えてくるのか……!? そしてトム・ホランドは出てくるのか!? 期待して待つ。

---追記---
気になってた白いスパイダーマン、「メトロ・スパイダーマン」でした。

2024/05/20

映画『ゴジラ-1.0』感想

普段は邦画をぜんぜん観ないのですが、これは話題になっていたので観てみた。

正直にいうと邦画が苦手なのですが、これはおもしろかった! いい意味で予想を裏切られた。

何故か日本人の俳優の演技に共感性羞恥のようなものを感じてしまって観るのが辛いのですが、その辛さが気にならなくなるゴジラのえぐい良さみ。

日本の映画でこんな素晴らしい映像を観れる日が来るなんて……。ゴジラシーンだけ延々と観ていたい。

ゴジラが想像を超えてよすぎた。なんなら『シン・ゴジラ』のゴジラと同じくらい好きかも。

ゴジラ登場シーンであまりのゴジラの良さにあっけにとられました。これ本当に邦画……? 極めつけは銀座で熱線を放出したゴジラ。あそこで邦画への抵抗感が一気に払拭された気がする。

ひねくれているのでなかなか邦画を受け入れられないのですが、この映画はゴジラがあまりに良すぎて……。

なんかヒットした理由がわかるな。だってゴジラのシーンだけもう一回観たいもん。うーん、『シン・ゴジラ』の時も思ったけど、なんでゴジラってこんなに中毒性があるんだ?

とりあえずわたしが好きだなと感じるのは、圧倒的に巨大な未知の力を人為の力でねじ伏せる希望の物語だから。

わたしが知らないだけかもしれないけど、そういうどでかいスケールで邦画を作ってくれるのってゴジラ映画くらいな気がしてて……。(あ、ウルトラマンがあるか……?)

「圧倒的に巨大な未知の力」が襲ってくる映画といえば海外でいうと宇宙人とか恐竜とかがあるけど、日本のゴジラはなんとなくキャラクター的というかユニークというか。怖いけどどこかかわいげがあるよね。そこが好きかも。

これって続編があるのかな? 続編ぜったい作ってくれー! 楽しみにしてる。

2024/05/19

映画『アリス・スウィート・アリス』映画

※ネタバレあり

この映画はアマプラで観たんですが、サムネが超絶美少女なんです。てっきりその美少女の映画だと思ったら映画が開始してすぐに殺されてしまいました。本当にがっかりした……。

そして観終わったあとで調べてみると、その美少女って『青い珊瑚礁』で有名なブルック・シールズだったらしいではないですか。わたしは『青い珊瑚礁』は観たことがないのですが、それに出ていた少女が有名なのは知ってたのでなるほどと思いました。

この映画はスラッシャー映画なのですがまずはブルック・シールズの話をしていいですか。本当に美少女だったんです……。

映画のタイトルにもなっているアリスってブルック・シールズのことかと思ったら違ってて、シールズはカレンという名前なんですが最後までちょっと混乱してました。だってブルック・シールズの方がアリスという名前にぴったりなんですよ。

どうやらブルック・シールズがこの映画のあとに人気になったのでタイトルを変えてシールズが主役かのように宣伝していたみたいです。主役のポーラ・シェパードには申し訳ないですがさもありなん、と感じてしまった……。本当にすまない。

シールズが美少女すぎてもう一度登場シーンを見直しましたもん。ブルック・シールズをもっと見たい……。他の作品も見たい……。お金かかってもいいから、借りようかな……。それほどまでに見たい。

ブルック・シールズを映像で見るまで、わたしは『青い珊瑚礁』にはそこまで興味がありませんでした。ヌードが出てくるらしい(?)から騒いでいるんだろうと思っていたのですが、ブルック・シールズがあまりにも美少女だから有名だったのかな。

ブルック・シールズの話で終わってしまいそうなので彼女の話はここら辺にして映画の話をしよう。

1976年の映画なんだけど、この時代の映画って服装や調度品が上品で古風でかわいいですよね。

不思議だったのが、俳優の顔の区別がつきにくかったこと。いつもならそんなことないんだけど、この映画はなぜか誰が誰かわかりにくかった。集中できてなかったのかな。

母親と姉が似ていたし、父親と刑事の顔の区別が最初つかなくて、犯人のおばあさんも一瞬ピンとこなかった。典型的な美男美女の俳優のせいかもしれないし、わたしのコンディションの問題かもしれない。

よく考えると矛盾しているところがたくさんあるけどあまり気にならなかった。やっぱり映画に身が入っていなかったのかもしれない。

もしかしたら、アリスという名前が『不思議の国のアリス』を連想させて、その物語が持つ圧倒的な寓話のイメージが知らぬ間に作用して、論理の破綻に対する抵抗を弱めたのかもしれない。

それに少女が主人公だというだけでわたしの評価基準は甘くなる……。少女という存在はそれだけで希少で価値のあるものだから。それにこの映画は少女の「残虐性」が魅力で、それには抗えない……。

映画のラストは不気味で意味ありげでよかった。アリスは一連の殺人の犯人ではなかったけど、殺人者としての素地はもともとあって、それが開花したんだろうなあと想像が広がるラスト。

なにはともあれ、ブルック・シールズを知ることができてよかった。ごめんなさいね、ブルック・シールズの話ばかりで……。でもそのくらい衝撃的に美少女だったんです……。

主役のポーラ・シェパードも迫力のあるいい演技していたんだけど、ブルック・シールズの美貌の破壊力に参ってしまいました……。

シールズを主役に見せかけたのはちょっと卑怯ではないかと思うんだけど、製作者の仕掛けた意図にまんまとハマってしまったわけで、今はむしろありがとうと言いたい。

ブルック・シールズの他の作品も観たいな。

映画『ナイトメア・アリー』感想

アマプラで『サイン』を観たあと、次の作品としてこの『ナイトメア・アリー』が出てきたので何気なく観た。『サイン』もそうだったんだけど、観終わった後で有名監督だったことに気づいた。

ふむ。ギレルモ・デル・トロが監督してたのね……。そっかあ。ギレルモ・デル・トロ好きなんだけど、この映画はギレルモ風味が少なかったね。あのギレルモにしか出せない味が大好きなんだけど……残念。

原作小説があるから仕方ないか。この映画、たしかに小説で読んだらおもしろそう。ギレルモが選んだ理由もなんとなくわかる。

映画はね、しっかり作りこんであって目に楽しく俳優の演技も良かった。映画の出来はいいと思う。

だけど、なんだろう。いまいちぶっ飛んでいない。何もかもがあまりにも上手すぎてお利口だったかも。ミーハーなわたしにはちょっと物足りなかったかな?

作品の完成度の高さでなんとか最後まで観れたんだけど、ちょっと長く感じちゃって。まあ二時間半あるから実際長いんだけど。若い視聴者をグイグイ最後まで引っ張っていくような作品ではないかな。

まあそんなミーハーなわたしでもブラッドリー・クーパーとケイト・ブランシェットのおかげで興味を持続することができた。特にブラッドリー・クーパーが良すぎて……! いつまで経ってもイケメン。良すぎ。だけど否応なく目を引かれるのはケイト・ブランシェットだね。すごすぎ。

返す返すも残念なのは、もっとギレルモ特有の世界観を楽しみたかったということかな。『パンズ・ラビリンス』『クリムゾン・ピーク』『シェイプ・オブ・ウォーター』とかに出てくる異形の造形がギレルモの見所だと思ってるから……。あと『MAMA』も外せない。まあこれはわたし個人のワガママなんだけど、せっかくギレルモが監督ならね……。

でも、ギレルモも前述のシャマランと同じくいろんなジャンルの作品を撮っているから、そのひとつとしてこういう映画を撮りたかったのかな。たしかに、いつもいつも同じような作品を作るわけにはいきませんものね……。

だけど有名監督が関わっているというだけで、映画への評価がちょっとあがるな。あがるというか、見方が変わる。その監督が撮った今までの作品と比べてどうか? という評価になる。これが良いのか悪いのかわからないけれど。

なにはともあれ、印象的な作品で文句のない良作なんだけど、個人的にはひっかからなかった。でも二時間半観たことに対して不満が湧いてこないくらいの良い作品ではある。それってすごいことだよね。観ても後悔はしないと思う。

映画『サイン』感想

なるほど。観終わってからエンドロールで知ったけどM・ナイト・シャマランの映画か。いい雰囲気の映画で見ごたえがあった。

正直、現代の高度なCGを見慣れている身としては宇宙人の全貌が見えてからちょっと興ざめしてしまったんだけど、これは宇宙人の造形を楽しむ映画ではないからな。

逆に言えば、宇宙人の姿が完全に見えていないところはとてもおもしろかった。音だけ聞こえたり足だけ見えてたり手だけ見えてたり、宇宙人の姿が巧妙に隠されている間は怖かったしワクワクした。

そっかあ。宇宙人の襲来を描いた映画は数あれど、世界の片隅の小さな家族の視点から宇宙人襲来を描いた作品って、そういえば初めて観た……。

押し殺したような恐怖が重厚な雰囲気と合っていてよかったな。最後には信仰に立ち返るというのもいいし、シャマランらしく伏線が張り巡らされていておもしろかった。

わたしとしてはシャマランの『シックス・センス』『ヴィレッジ』『ヴィジット』あたりが好きだから、この『サイン』もけっこう好きな部類。身近な視点で心の機微をつぶさに見つめながら度肝を抜くトリックで楽しませてくれるのが好き。

まあ『エアベンダー』や『スプリット』『オールド』でも「シャマランがこの映画を撮ったの!?」ってある意味で度肝を抜かれたけど笑。いろいろなジャンルの映画を撮りたい挑戦的な監督なんだね、シャマランって。

なにはともあれ、今まで観た宇宙人映画のなかで一番情緒的な作品かもしれない。いい映画でした。

2024/05/14

オーディブル所感

オーディブルね……。初月無料期間中に作品を聞き終われなくて二か月目に突入してしまったけど……。続けるべきか、続けないべきか……。今のところ、「続けない」に気持ちが傾いている。

最初に聞いた作品が悪かったのだろうか。小説を聞いちゃったからな。まさか朗読するとき熱心に演技するとは思っていなくて面食らった。わたしは淡々と読んでもらいたいんだけど。

それで、小説がいけないんだと思って進化論の本を選んでみました。さすがにこれなら演技の余地はないだろうと思って。そうしたら、なんと笑えることに、この本でさえナレーターがノリノリで調子をつけて朗読していました。

いやはや。うーん。いや、うん。わたしの方が少数派なんだ。たぶん、淡々と読まれるより強弱つけて大げさに読む方が好ましい人が多数派なんだろう。たしかに、一本調子で読まれると不愛想だし抑揚がないから頭に入ってこないのかもしれない。

じゃあ、粛々と読んでもらえない問題は仕方ないとして。次の問題は読み終わるまでの時間が長いことかな。

普通に紙の本を読むよりずっと時間がかかる。いやでも、そもそもオーディブルをはじめたのは、絵を描いている時や料理をしている時の耳が暇な時間を有効に使いたいという目的があったからだ。

時間がかかることはかかるけど、本来ヒマな時間を読書の時間にできるという意味ではいいのかもしれない。

でも短い時間こま切れに聞くことしかできなくてさらに読了までに時間がかかるんだよな。いやでも、音楽やラジオを無分別に聞くよりも自分で本を選べる分いいかもしれない。

それじゃあ時間がかかる問題も受け入れるとして、読むスピードの問題がある。

紙の本を目で追って読むスピードって一定ではないですよね。緊迫した場面では速くなるし、重要でない文はわざわざ一字ずつ読んだりしない。

でも朗読の場合は一文一文大体一定のスピードで進行する。もちろん聞いている人の聞きやすさを慮ってくれているんだろうけど、間延びした感じが否めない。

ああ、それは小説を読まなければ解決する話か。事実を列挙する本を選べばいいんだ。それならいいや。それはいいんだけど、読み飛ばしたいところも律儀に朗読してくれるのはちょっと辟易するかも。

たとえば「チャールズ・ロバート・ダーウィン(1809年-1882年)」の「(1809年-1882年)」の部分とか。普段は読み飛ばしちゃうんですが、朗読はおとなしく聞いておくことしかできない。いやこれはわたしが普段からちゃんと読めって話か……。

でもねえ。最大の問題は、文字の情報量に比べて音の情報量が少ないことかもしれない。

だって朗読聞いてて「しよう」って聞いてすぐに漢字を思い浮かべられる人いますか? まあ文脈でわかるっちゃわかるのですが、「止揚」って文字を読んだ方がすぐにわかりますよね。

あと、()「」で説明されている文がわかりにくい。たとえば文章で「ネオテニー(幼形成熟)とは」と書いてあったとするじゃないですか。文字だと区切りがすっきりわかりますよね。

だけど朗読だと「かっこ」「かっこ閉じ」を読んでくれないから「ねおてにーようけいせいじゅくとは」ってそのまま読まれるんです。これ、例えが上手くないのでちゃんと説明できていないのですが、とにかくわかりにくくて……。

うーん。なんか……否定的な意見ばかりが出てくるな。

これは認めなければならないかもしれない。わたしにはオーディブルが向いていないのだと……。

でもなあ。散歩中に本を聞ける利点は捨てがたい。一時間くらい歩くこともあるし、その時間を読書に充てられるのは大きな利点だ。

でも、月額がちょっと高いわりに不満が多いかな……。どうだろう。慣れの問題か?

とりあえず、もう少し様子を見てみる。

---追記---

ちょっと待って。オーディブルって、図表がある場合に不便すぎない……? うわあなんか脱力した……。そういえばそうじゃん……。

それにオーディブルは紙の本に比べると付加的な情報がまったくないんだよな。カバー裏のあらすじも読めないし、そでの文章も読めないし、見返しに何が書いてあるかも見れないし。

『ゲド戦記』みたいに見返しに地図があった場合、それも付属資料として添付してくれるのか? 他にも『三体』みたいに登場人物表がついている場合はどうするんだろう。

え、っていうかもしかして奥付も見れないの? ということは翻訳された本の扉に書いてある原題と出版年とかも読めないんだね? ついでに本の最後にあるシリーズの紹介とか本の紹介とかもないんだ……。そんなあ……。

あれ? そういえば注釈とかはどうなっているんだ……? ええ……?

もうこれ以上減点ポイントを増やさないでくれ……。今すぐやめたくなる……。

紙の本がいかにわたしにとって優れているかがわかる。一目でどれくらいのボリュームかわかり、ちょっとあらすじやさわりを読めば話の雰囲気がわかる。オーディブルでも話の雰囲気は目次を読めばいいんだろうけどさ、文章の相性ってあるじゃん……。

それに紙の本なら、今自分がどのくらい読んでいてあとどのくらいで読み終わるのかがページの厚みでわかるからラストに向けて自然と緊張感が高まっていく。オーディブルのように残り時間で表示されてもピンとこない。

ううう。なんかやっぱりわたしには向いてないかも。やめようかな。

---追記---

やめました。わたしはやはり紙の本が好きです。

2024/05/13

凪良ゆう『汝、星のごとく』感想

※ ごめんなさい、この本が好きな方は読まない方がいいです。



…………。←文句を言いたいのを必死に抑えている沈黙。

いや、今回はわたしが全面的に悪い。

まず、オーディブルで聞いたのが悪かった。オーディブルとわたしの相性が悪い。はじめてのオーディブルで、よくわからないけど一番目立っている作品を選んだのがダメだったし、ナレーションで読み上げられるのがこんなに不快だと想像できなかったわたしが考えなしだった。

あと、本屋大賞という宣伝文句につられて読んだわたしが馬鹿だった。わたしよりたくさんの本に触れているであろう書店員さんが選ぶならおもしろいだろうと信じたわたしが間違っていた。そりゃあ売れる本を選ぶよね。そして本を売るためには、普段本を読まない層が買わないとヒットしないもんね。

それと、知らない作家に挑戦したのも愚かだった。たまには売れている本や新人作家を読もうとしたのがいけなかった。でも、すでに読んでいる本や好きな作家の本はオーディブルで聞きたくない。わたしのなかのわたしだけのイメージを大切にしたいから。だから、知らない作家なら思い入れもないし、おもしろかったらめっけものだと軽く考えていた。

なぜわたしがこんなに鬱憤を抱えてしまったかというと、この作品に費やした時間が長く辛いものだったから。この作品を聞き終わるまでにかかる時間は約12時間。12時間ものあいだ好きになれない作品に耳を傾けなければならなかった。

これね……紙の本なら起こり得なかった失態なんですよ。だって紙の本ならパラリとめくって数秒読んでわたしにとっておもしろいかおもしろくないかわかるから。オーディブルではそれができないのが痛手だね……。そしてわたしは一度読み始めた本は読み通すことを信条にしているから、途中でおもしろくないと思っても放り出せない。

うがが……。すべて自業自得なんだけど、フラストレーションを感じる。わたしにとってつまらない本を読んでしまったという後悔。いや、この作品も迷惑だよね。わざわざ自分から聞きにきといて文句タラタラなんだから。なら読むな聞くなって話ですよ。わたしがぶつかりに行っているんだから、10対0でわたしの責任です。

途中まではわりと聞けたんです。耳で聞くとこんなものかな? と首をかしげながら、まあオーディブルは初めてだし様子を見ようと思っていました。だけど途中から至るところに違和感を感じて、その違和感を必死で無視して無心で聞こうと努めました。

そしてやっとこさ終わり、改めて考えて、「……あれ? この本、つまらない……?」とじわじわと実感し、そんな本を12時間も聞いていたことに自分に対して怒りを覚えました。

わたしは普段、人の感想とか調べません。だけど今回ばかりは調べました。これをおもしろいと言っているのはどういう人なのか、そしてわたしと同じように不満を持っている人がいないか調べるために。

それで少数派ですがわたしと同じように感じている人がいることに安堵して溜飲が下がりました。この作品のおかしなところをいちいちあげつらうことはしませんが、とにかくnot for meであったことは否定できない。

いや、これは作品が悪いのではなくて、わたしの好みの問題なんだ。これに尽きる。もともと恋愛小説が苦手だし……。まあこのひとつ前の記事でジェーン・オースティンを絶賛していたわたしが言っても説得力ないか……。でもジェーン・オースティンと凪良ゆうを比べるのはあまりに酷ですよね……。

あとこの作品に対する嫌悪感は内容だけじゃなくて、ナレーターの男性に対する嫌悪感でもある。わたしはこの作品のナレーター男性の京都弁や女声がちょっと受け入れがたかった。本当にごめん。

はあ、まあ、でも……。普段読まないような作品に触れられたことはよかったじゃないかと自分を慰めるしかない。こういう作品が現代の若者にウケているってことなんだろう。

そういえばわたしが小学生か中学生のときも、ケータイ小説が流行っていた。わたしも読んでいた。うん。そうだな。読書をはじめた最初の頃は、何が駄作で何が傑作かの区別もろくについていなかった。読む作品すべてが新鮮でおもしろかった。目についた本はなんでも読んでいた。

おそらくこの作品に感動して、読書にのめり込む人がいるだろう。本を普段読まない人を読書の世界に引き入れる力を持った作品だと思えば、自分を許せるような気がする。

この失敗にへこたれずに、果敢に新しい本に挑戦していきたい。

ジェーン・オースティン『説得』感想

はあ……。なぜジェーン・オースティンはこんなにおもしろいの。わたしが今まで読んだ彼女の作品は『高慢と偏見』と『エマ』だけなんだけど、どれも最高におもしろかった。

ヒロインのアンがすごくいい子で、読んでいて安心感があった。エリザベスやエマのような気が強いヒロインもいいけど、完璧淑女ヒロインは読んでて気持ちの良さがちがうね。

話の筋としてはすごくシンプル。若いころの愚かな選択で結婚を逃したアンとフレデリックが時を経て結ばれる話。

思い返してみると本当にささやかな物語なんだけど、読んでいる最中はとてつもない魅力でぐいぐいひっぱられて読み進めていってしまう。

アンは控えめで自分から行動を起こして読者をひっぱっていくような人物ではないんだけど、なぜだか目がはなせない。

それはアンが好きにならざるをえない女性だからだろうな。感性が繊細で洞察力に優れていて、だけどそれをひけらかさないし家族や知人のために尽くそうとする。

思っていることを言わない聡明さを持っていて、優しいけど芯の強さもある。欠点が見当たらないすごい女性なんだけど、それがわざとらしくないしつまらなくもない。

顔を赤らめたり動揺して態度に出てしまったりする素直なところも可愛くて……。心から応援したくなる。

多少気になることがあってもおもしろければすべて許されると思っているので、ジェーン・オースティン作品には文句のつけようがない。

ジェーン・オースティンの作品ぜんぶ読みたいな。

2024/05/12

マット・リドレー『赤の女王 性とヒトの進化』感想

この本を読んで、男女の性に対する認識が変わったような気がする。

わたしはどちらかというとミサンドリー的立場だったんだけど、この本を読み終わってから男女どっちもどっちだなという感想に落ち着いた。

進化生物学っておもしろいかも。自然淘汰や性淘汰がどのように行われるのかたくさんの事例が挙げられていた。

途中まで鳥類の話が延々と続いたからちょっとげんなりしたんだけど、これがすごく効果的でね……。菌類や鳥類、哺乳類と地続きで人間がいるんだなあって実感できた。

人間は動物のひとつに過ぎなくて、動物には多様な繁殖方法があり、人間のパートナー選びが鳥類に似ていたり類人猿に似ていたり似ていなかったり。

いろんな動物がいろんな繁殖をするよ、って話がたくさん出てくる。ツバメ、クジャク、イルカ、ゴリラ、チンパンジー、その他聞いたことのない動物……。

その生物のどれもが、より優れた子どもをよりたくさん産むための戦術を駆使して、選び選ばれている。

男が女を誘惑したり浮気したりするのは、繁殖のための戦略で、ただ遺伝子を残すために最適な行動をしているだけ。

女性も子どもを生かすために子育てを手伝う男を選び、優良な遺伝子のために時に浮気する。よりよい子どもを産み、その子どもが繁殖しやすいようにするため。

男性と女性がどういう相手を選びがちなのか、っていう研究結果も列挙されていて、まあ当たり前だよなという結果だった。

男も女も選り好みしてライバルを出し抜いてセックスしようとする。良い遺伝子を残すために行動している。それって生物として仕方ないんよなあと諦めに似た気持ちを抱き、すこし心が穏やかになった。

男女の不実を許せるようになったというか、愚かであるのは生物として当然の姿なんだなあと納得したというか……。

進化学に興味が出てきたので、次はドーキンスの『利己的な遺伝子』読もうかな。買ったまま積んでいたので満を持して……笑。

2024/05/11

映画『バーバリアン』感想

※ネタバレあり

めっっつちゃ怖かった……。いやほんとすごく怖かったんだが……。久しぶりにホラーを見たから過敏になってたんだろうか。ずーっと小声で「こわいこわいこわい」って言ってた。映画止めて逃げたかったけど面白すぎて止められなかった……。本当に怖かった。

だけど怖いだけじゃなくてね……ちょっと切なかった……。とりあえず最近観たホラー系の映画で一番おもしろかった。

導入のなんでもないシーンからそこはかとなく緊張感が漂っていた。最初の数分観ただけでおもしろい映画だなってわかるのすごい。事前情報なしで観たから、どういう映画かぜんぜん知らなかったんですよね。幽霊系かモンスター系か怖い人間系かわからなかった。

最初にでてきたキースがいい人なのに嫌な予感が纏わりついてて、この俳優さん何かに出てたけど思い出せない……と思ってたら途中でピンときた。ワインを開けずに待っていたシーンで思い出した。あそこちょっとしたシーンなのにゾッとしました。

あの俳優さん『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のペニーワイズだ。見たことあるのに思い出せなかったのはピエロの格好してたからだ。

ペニーワイズだと気づいてからはキースのことが信用できなくなってハラハラしながら観ていたんですが、まさかそれがミスリードだったとは。上手いこと配役しましたよね。キースに疑いの目を向けておいてまさか死ぬとは。本当の化け物の餌食になってしまった。

地下の暗闇で四つん這いになったキースでまず心底ぎょっとしたんですが次にマザーが出てきた瞬間まじで誇張なく悲鳴あげて飛びあがってしまった。怖すぎ。怖すぎ。信じられないくらい怖かった。

いやはや、テスは死んだと思いましたよ。でも二週間生き延びてたんだ。そうか……二週間マザーはテスの世話をして(彼女なりの)愛情を注いでいたんだ。それで最後のシーンに繋がると思うと……。

なぜマザーはキースを世話せずに殺したのかと考えてみると、おそらく自分より背が高いからではないかなと思った。マザーのあのガタイの良さにはそういう理由があったんだと思う。マザー役の俳優は名前からしてたぶん男性だし、AJは背が低い俳優が演じていた。

自分より背が高い男性を殺すのはフランク(背が高い)に対する恐怖からだろうな。フランクのいる部屋には近づかなかったし。

今回観てて思ったのは「裸の人間が襲ってくるの怖すぎ」でした。服着た幽霊より怖い。それにマザーって背もでかいですが胸もでかくてそれが衝撃的だった。異形の生物に豊かな乳房がついている違和感がすごくて。

乳房が大きいのは深い母性の現れなんだろうな……。ただの殺人狂じゃなくて赤子に対する愛が溢れている狂人なんだ……。いわば被害者よね。あの地下で延々と赤ちゃんのお世話のビデオを観ていたんだ。

テスもね……マザーが憎くて殺したんじゃなくて、マザーは怪我した自分を地下に連れ帰ることしかできないから、殺すしかなかったんじゃないかな……。

とことん怖がらせておいて、最後にちょっと切なく終わるなんてずるいよ……。

うーん。思い返してみても怖い。それに新しい。そう、新しいから予想がつかなくてひたすらビクビクするしかなかった。

なにはともあれ、思いっきり怖がることができて大満足。記憶を消してもう一回観たい。それくらい良かった。

2024/05/09

ドラマ『ギルモア・ガールズ:イヤー・イン・ライフ』感想

※ネタバレあり

ええ!? ちょっと待って、これこのまま終わらないよね? すぐにも新しいシーズンが作られるよね? 今から面白くなっていくんでしょう?

うわああ……続編は人気次第ってことか……? ラストが衝撃的すぎて……。これ確実に製作側は仕掛けてきてるでしょ……。

だって「秋」でやっと主役級が揃ったじゃないですか。ディーンが出てきてスーキーが出てきて……。そう、スーキーですよ! スーキー出てこないの? ってヤキモキしてたから最後に出てきて本当によかった。

というか、ローリーの妊娠……、突然すぎない? まあ伏線はあったか。ローガンと素晴らしい夜を過ごした日にできたんだろう。ローリーの妊娠がすべてをかっさらっていったよな……。

はあ、パリスのことも気になるしローレライがホテル事業を拡大するのもこれからだしエミリーとジャックの関係も知りたいのに。

本当に続編希望。なんなら出演者がこれ以上年を取るまえにドラマシリーズ復活してくれ。

だって、ローレライ役のローレン・グレアムがギリギリだよ……? なんならエミリーの方が持ちこたえてて驚いた。

どうして、どうして……。ローレン・グレアム以外はほとんど変わってなかったのに。

ローレン・グレアム、他のドラマの役作りであんなになっちゃったの? それとも不摂生のせい? 声がガラガラだったから酒か煙草か……。

なんだかなあ。ローレライが、本当に……歳を取ってて。いや、歳を取るのはいいんです。問題は、他の出演者は驚くほど変わっていないしなんなら年齢を重ねて美しくなっているのに、なぜか彼女だけがしわくちゃになってることです。

顔立ちの問題かな……。眉がつりあがって目が小さくて意地悪そうに見えるんですよね。まあ好みの問題でしょうが。

女優の見た目にとやかく言うのはいけないことなのかもしれませんが、他の俳優が容貌を維持しているのを見ると……この違いは何? と思ってしまいました。いや、どこまでも好みの問題か……。

他の俳優も変わった人はいましたけどね。パティやスーキーは驚くほど痩せていましたね。特にパティは心配になるほど痩せていて心配になりました。

でも懐かしい面々が元気そうに出演しているのを見ると心が温かくなりました……。本当によかった……。

ただ、残念なのはリチャードが亡くなっていたこと……。でもその事実が物語に歳月の重みを加えていて、こう言ってはなんですがそれもまた定めだったのだろうなと感じます。

というか、今回は脚本がすっごくすっごく良くて。本編よりも好き。ユーモアも冴え渡っていた。映像も綺麗で撮り方も斬新でもう大満足。

ローリーとクリストファーの一場面もよかった。ひっかかっていたんですよ、なぜローリーはクリストファーに対して疑問を持たず普通に接することができるのか。むしろ甘いなと思っていた。普通なら恨みますよね。

だって孕ませた女の子になんの援助もせずに世間の荒波に放り込んだ張本人ですよ。男親の援助がなく苦労しただろうに、なんのわだかまりもないものだろうかと納得できませんでした。でも今回ローリーがクリストファーにぶつけた問いのおかげですっきりしました。

そう、クリストファーはひどい男なんですよ。ローリーにその問いをぶつけられてしどろもどろになる彼を見て、やっぱりこの男はギルモアの女たちにふさわしくないと改めて感じました。

それにしてもねえ。ローリーとローガンが……。その関係もまた大人の苦みがあっていいよね。

でも、ローガンはぶっちゃけそれほど好きになれない。なんかあの話し方が気になる。目を細めて声を低くしてかすれさせるのがなんか、なんとなく……色男ぶっているというか。いや、イケメンではあるかもしれませんが、背もちょっと低いし……。

でも、ローガンはジェスよりはマシかなと思っていたんです。実は以前までジェスはろくでもない男だと思っていました笑。だけど『イヤー・イン・ライフ』ではいい男になっていましたね。ローガンよりもむしろジェスとくっついてほしくなっちゃった。

ローリーがこれからどうなるのか、ぜひとも知りたい。何度でも言う。続編希望。

エミリーも以前よりずっと好感の持てる人物になったし、これからどんなふうに生きていくのか見てみたい。あの言葉の通じないメイドのおかげでエミリーの生活が賑やかになって安心した。

何人ものメイドをクビにして辛く当たってきたエミリーを孤独から救ってくれたのは婦人会などのハイソサエティの人間ではなく、いままで虐げてきた人々なんだなあ……。しみじみといいね。

特に感動して泣いちゃったのが、旅に出たローレライが丘にのぼって景色を見て、エミリーに電話をかけるところ……。

リチャードの葬式でローレライがひどいことを言ったこと、ちゃんと昇華されるんだね……。葬式での言動はあまりにローレライが愚かで憤りを感じたけれど、その愚かさがなければこの感動は味わえなかったんだ。

よく考えれば登場人物みんな愚かなんだけど、どうしても憎めないんだよな。その愚かさが愛おしいと感じる。

『イヤー・イン・ライフ』のおかげで『ギルモア・ガールズ』が本当に好きになった。

まだ物語は終わってない。しつこいけどまた言っておく。続編希望。熱烈に。

2024/05/08

ドラマ『ギルモア・ガールズ』感想

※ネタバレあり

このドラマ、途中で観るのやめていたんですよね。だんだんローレライの性格が無理になっちゃって……。

でもネットフリックス制作でやってる続編の『ギルモア・ガールズ:イヤー・イン・ライフ』を観たくて頑張って観終わりました。全7シーズン、全153話。

いまイヤー・イン・ライフの方をちょっとずつ観てるのですが、これを観るためだけでも本編を観終わっていてよかったです。十年後(だよね?)の登場人物を観るのがおもしろすぎる。こっちの方も観終わったら感想書きます。

『ギルモア・ガールズ』、最初はおもしろく観てたのですが、だんだんわたしの趣味に合わなくなってきて……。

なんだろうな……。むずかしい問題ですよね。ドラマって登場人物がある程度愚かじゃないと物語にならないじゃないですか。

その愚かさって観ている側としてはもどかしいんだけど、それをいかにリアリティをもって納得させるのか、っていうのが俳優含めた製作者の技量だと思うんです。

もちろんいろんな制約があるから仕方ないと思いますよ。視聴者、俳優、脚本、スケジュール、監督、プロデューサー全方位の要求をきいて満足させるのは難しいだろうし。

しかしいろんな事情があったにせよ、そんなの知らないわたしからしたら、正直なところ観ていてなんか不快だなと思ってしまうんですよね。

わたしが無理だなと思ってしまった理由が、ローレライの行動や決断に賛成できなくなってしまったから。

ルークとやっと結ばれて婚約したのにそれを自分から壊しにいくような行動がよく理解できなかったし、そのあとクリストファーと結婚したことでますますよくわからない人になってしまった。

あまりにも愚かだし、納得ができない。最後にはベラベラと無駄なことを話し過ぎるというローレライの特徴すら無理になってしまった。それがローレライの持ち味なのにね。

エミリーはね、ローレライと同じくらい頑固で偏狭でもどかしいっちゃもどかしいんだけど、可愛げがあるんですよね。だからなんとか許せる。

残酷なこというけど、わたしはローレライの俳優さんの見た目がそんなに好きじゃないんだろうなあ。美しい目をしてるとは思う。スタイルもいい。だけど、髪の毛質とか鼻の形とか話し方がわたしにしっくりきていない。

見た目がわたしのタイプではないという理由で、わたしは話の筋に納得ができないんだ。どうしてローレライがそんなに男性に求められ、そして男性を振り回しているのか。

もしかしたら、自分の母親を思い出させるからかもなあ。嵐のように周りを振り回して傷つけて、それで自分もいっぱしに傷ついて、いつまでも子どものような人。

あれ、よく考えると髪質とか鼻の形とか、わたしが嫌いだと思うところが母親を彷彿とさせる……。つまりわたしはローレライが嫌いなんじゃなくて自分の母親が嫌いなんだ笑。

ローレライもね、憎めない人ではあると思うんですよ。主人公だからストーリー展開のための犠牲にならざるを得ないだろうし。

その点安心して見れたのはローリーですね。変人揃いのドラマの中で唯一の良心。完璧美少女で頭もいい優しい子。ローリーの美少女っぷりは本当に神がかってました。

男を見る目は……うーん、ちょっとなんともいえないけど、おもしろい展開だったからよし。

個人的に好きなのはパリスかも……。というか強烈すぎて圧倒されたというか笑。

ん!? Wikipediaにすごいことが書かれてるんだけど。

「ウェイルは当初ローリー役の予定であったが、結果的にアレクシス・プレデルが同役を演じることになったため、製作者側はウェイルのためにパリスという役を用意した。」

うわわ……これって、なんか気まずいな。パリス役のウェイルはどういう気持ちだったのかを想像すると……。まあ想像するしかないですが、やはり悔しさはあったのでは……。

途中退場するかと思ったパリスがシリーズを通してローリーの親友だったのは、そういう事情もあったのかな……。

ディーンとジェスとローガンについてもいろいろ言いたいことはあるのですが、長くなりそうなので割愛。

なにはともあれ、観終わってよかった。観てる途中は飽きたりうんざりしたり呆れたりしたけれど、観終わってみると良い思い出。

これってスターズ・ホローという街への印象そのものだな。なんだかんだいっても、愛すべきドラマだったということだな。

スティーヴン・ミルハウザー『バーナム博物館』感想

今まで読んだミルハウザー作品とはちょっと違う雰囲気の短編がいくつかあって、それがなかなか手強かった。

いや、正直にいうといくつかの作品がなんとも読み辛くて、読み終わるのに時間がかかってしまった。

ミルハウザーらしいといえばらしい作品なんだけど、実験的な要素が強かった気がする。どの小説でもそうですが、実験的な作品って興味深くはあるんだけど読みにくいんだよな……。

特に苦労したのが「探偵ゲーム」。これを読むのが大変だった……。日本人には馴染みのないゲームだから想像がつきにくいというのもひとつの理由だとは思うけど。

どうやら原書では担当編集者の思い入れが強いゲームだったらしくて、これが短編集のトップだったそうだ。それって大丈夫だろうか? トップにもってくるにはアクが強すぎやしないか。

誤解を恐れずにいうと、原書の短編の順番には首を傾げる。だって「バーナム博物館」のあとに「セピア色の絵葉書」って。「幻影師、アイゼンハイム」のまえに「ロバート・ヘレンディーンの発明」って。

短編の順番ってその短編集の印象を左右する重要な要素ではないですか。なんか原書はチグハグなイメージが拭えないんだけど……まあわたし個人の感想なのでね。

日本の短編の順番は大満足。

  1. 「シンバッド第八の航海」
  2. 「ロバート・ヘレンディーンの発明」
  3. 「アリスは、落ちながら」
  4. 「青いカーテンの向こうで」
  5. 「探偵ゲーム」
  6. 「セピア色の絵葉書」
  7. 「バーナム博物館」
  8. 「クラシック・コミックス #1」
  9. 「雨」
  10. 「幻影師、アイゼンハイム」

うん。何度見てもこれ以上変えられないくらい素晴らしい順番だと思う。美しい波に揺られるようにミルハウザーの世界を堪能できる。

訳者の柴田元幸が著者に許可を得て変えたそうだ。訳者あとがきを読むたびにしみじみ思うけど、本当に柴田元幸が訳者でよかった。柴田元幸が訳してなかったらこんなに好きにはならなかったかもしれない。

それにしても、この短編集で出色の出来栄えはなんといっても「幻影師、アイゼンハイム」だ。最後を飾るこの作品まで辿り着くのに本当に苦労したけど、読んだ甲斐があった。

これぞミルハウザー。もう何も言うことはない。すべてはわたしの記憶に刻まれている。

Wikipediaを読んでみたらなんと映画化していた。しかもエドワード・ノートン主演で。ノートン好きだけど、アイゼンハイムって感じではないな。あの天才性でイメージの差異をねじ伏せるのだろうか。

いやはや……「幻影師、アイゼンハイム」がすごすぎて、他の作品の影が薄れてしまった。他の作品も良かったんだけど、最後に全部アイゼンハイムに吹っ飛ばされた。

すごいよ。本当に……。もう沈黙するしかない。黙って次のミルハウザー作品を読もう。

ミルハウザー作品は基本的に日本での刊行順に読んでいるんだけど、それぞれの作品が書かれた順番がめちゃくちゃ気になる。せめて本国での刊行順を知りたい。いつか気が向いたら調べよう。

次は『木に登る王:三つの中篇小説』か。以前読んだ『三つの小さな王国』がおもしろかったから期待大。

ミルハウザー作品は貴重だから大切に読んでいこう。

2024/05/05

アニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』感想

このブログにたまに出てくる某さんから『キンプリ』→『プリティーリズム・レインボーライブ』→『キンプラ』を観たらいいという有益情報をいただいたので観ました!

めっちゃおもしろかった……。こんなにおもしろいとは!? オススメされなかったら出会えなかった……某さんに感謝。

女児アニメ観たのはじめてかもしれない。心の綺麗な部分がプリリズRL観ているあいだは蘇ってたような気がする。

よそのSNSにも書いたけどこっちにも書いておく。

好きなキャラ→べるちゃんとおとはちゃん
好きなカプ→なるちゃんとりんねちゃん
好きなプリズムショー→ベルちゃんとジュネさま
好きな服→あんちゃん
印象がひっくり返った子→わかなちゃん
個人的ツボ→おとはちゃんの大声
好きな大人カプ→わかなちゃんのお父さんとお母さん
イラスト描きたい→コウジくんのお母さんとべるちゃんのお母さんとプリズムワールドのおねえさん

個人的に大人組のあれこれがよかった。特にわかなちゃんのお父さんとお母さんが好きだな。

わかなちゃんのお母さん、あの薄幸そうな見た目がすごい好きだったんですが、元ヤンだったと知ってますます好きになっちゃった。仕事一筋自己中家事放棄お父さんが明るい家族愛ハワイアンお父さんになって尻にしかれるのもいい。

べるちゃんのお母さんも愚かで不器用で弱くて旦那さんに依存してるかんじが可愛いんだよな……。後半化粧が薄くなったお母さんもいいけど化粧濃いお母さんも好き。

コウジくんのお母さんはね、見た目がすごく好み。一番イラスト描きたいかも。仕事バリバリこなすキャリアウーマンな未亡人……。

千里さんとプリズムワールドのお姉さんは癒し。どこまでもかわいすぎる。

というかみんなかわいすぎるんだよなあ……。最初に好きになったのはおとはちゃんだけど、話が進むにつれてべるさまも好きになった。

わかなちゃんも家でのギャップある姿を見てから印象変わったし、いとちゃんも最後の方は笑顔がたくさん見れてうれしかった。

なるちゃんとあんちゃんは性格もかわいいんだけど服がかわいくてかわいくて……。小学生のお洒落な服を見ると甘酸っぱい気持ちになる。二人はいいこすぎて心が洗われたよ。

りんねちゃんとジュネさまはプリズムショーがすごすぎて……。プリズムワールドの使者がいかにすごいかプリズムショーで視聴者にわからせるってほんとすごいよ。

りんねちゃんがプリズムワールドに帰っていくところは号泣したなあ。というか後半ほとんど泣いてた。

アニメの満足感もすごいんだけど、某さんとたくさん通話で話せたのも嬉しかった笑。

次はキンプラ! たのしみ!

映画『バービー』感想

なんだこりゃ笑。めっちゃおもしろかった笑。

誰が考えたんだろう、バービー人形の映画化なんて……良い意味でぶっとんでるね。

いやほんと、よく考えたらおかしいよね? バービー世界と現実世界の行き来を描くなんて……。考えた人は天才でしょ。新しい。新しすぎる。わたしたちは常に新しいものを見せてもらいたんだ。ありがとう、この映画を作った人。新しい世界、見れました。

時代に合ってる……のか。いやそれどころか、バービーでしか描けないものがあるな。うん。

バービーとケンの馬鹿馬鹿しさとあっけらかんとした明るさがなければ、この映画はただの口うるさい風刺映画で終わっていたような気がする。

格差や差別を描いてるのにこんなにハッピーで希望を持てる映画がかつてあっただろうか……。底抜けのハッピーさもわざとらしくてシニカルなんだよなあ。そこがいいね。

あの斬新な視点、すごくないですか? バービーは常につま先立ちだし食事をしないし恋愛もセックスもしない、そして老いもせず死にもしない! 毎日ビーチに行ってパーティして夜は女の子で集まって楽しく暮らしている。

そしてバービーのおまけでしかない存在のケン。バービー世界は女の子が主役なのが当たり前。バービーはみんな完璧で平等に輝いている。そんななか、現実世界の歪みがバービーに影響してあれよあれよという間にバービーとバービー世界は変化していく。

これって単純なフェミニズム映画じゃないんですね。「女性はこんなふうに虐げられている!」という主張すら誇張されて茶化されている。

男性が支配する社会もこれでもかと馬鹿にしているんだけど、それと同じくらいバービーたちの女性優位社会も馬鹿にしているんだよな。いや、馬鹿にしているというのは違うか。風刺している?

男性優位、女性優位、どちらの世界も見たバービーは自分を見失って絶望しちゃいますよね。それからなんやかんやしてバービー世界を女性の手に取り戻して、それじゃあこれからバービーはどう生きたらいいのか? という問いに映画がどう答えたかというと、産婦人科に行くバービーで映画を終わらせた。

一瞬、え? どういうこと? と思ったんだけど、作中で言及されていたバービーには性器がないという描写を思い出してなるほどと思った。

生きていくために、まずは自分の身体を知ることからはじめるってことだとわたしは思ったけど……どうだろう。性は生に内包され、生は死に内包されている。生きて死ぬひとつの肉体からすべては発する。

バービーは人形として完璧なプラスチック人生から、性器を持った生身の人間として生きることをはじめようとしているんじゃないかなと思った。

女性の権利とか男性の支配とか自分を自分たらしめるものは何かとか、いろいろな問題があった。それらをなんとかしようとする前に、まずは一番近いところ、自分にとってのすべてのはじまりでありおわりである肉体の理解から出発しようというメッセージなのかな……。

ちょっとこの解釈は自信がない……。

でも、社会でどんな問題が起ころうと人生で何が起ころうと、わたしという個人は肉体のくびきから逃れられない。逆にいえば、個人は肉体という砦に守られている。肉体だけがわたしの唯一にして完全な持ち物なんだ。

その肉体がどういうものか、人間になったばかりのバービーは知らないんだと気づいたとき、わたし自身もわたしの身体について知らないかもしれないと気づかされる。

社会や人生がどういうものかわからないのと同じくらい、わたしは自分の身体がどういうものなのか知らない。

人間として生きていくなら、まずは自分について知ることが大事なのかなあと思った。

まあそういう小難しいこと抜きにして、ほんと純粋におもしろい映画だった。声出して笑ってた気がする。もう一回観たい、いや何回でも観たいかも!

映画『アンテベラム』感想

※ネタバレあり

たったひとつのアイディアで一点突破しようとした作品。 こういう作品ってインパクトあって人に勧めやすいですよね。

過去だと思っていたものが実は現在で、現在だと思っていたものが実は回想だった、というのは文句なしにおもしろい。わかりやすくて驚きもひとしおだった。

てっきり過去の南北戦争時代だと思い込んでいたらじわじわと「なにかがちがう」という予感が迫ってきて、満を持して上空を飛行機が飛んでいく……。

そういうことか、ってびっくりした。びっくりはしたんだけど、あまりにも慎重にバレないようにそこまで進めたせいで、映画の中盤まで(つまりネタバレまで)が前振りになってしまった感じは否めない。

ネタばらしまでのシーンが平板な前座になってしまったような気がして、もっとうまくできなかったものかな……と思ってしまう。いや、十分にうまいんですけどね。それでもね。

だって「いつになったら映画が本格的にはじまるんだろう?」って不思議に思って観てたら映画の中ほどでやっと勢いがついたので「遅くない?」と感じてしまった。

助走が長すぎてジャンプの勢いがそがれてしまったような気がする。いいアイディアだっただけに、もっと高くまで飛べたんじゃないかと惜しい気持ち。

ネタばらしをしてからの展開もすこし緊張感に欠けていたかも……。まあそれくらいゆるい方が観やすいんですけどね。

監督の経験が浅いのかな? と失礼ながら思ってしまったんだけど、どうやらこの映画が長編デビュー作らしい。前は短編を撮っていたんだろうか。それなら納得かもしれない。

惜しい点はあれど、アイディアはすごくよかった!

2024/05/04

映画『ブレイド』感想

※ネタバレあり

おもしろかった。90年代の映画の質感が好きだから評価が甘くなるのは許してほしい。

アクションシーンもいいし近代的なヴァンパイア像もいいしブレイドのキャラクターもいい。

なによりブレイドの俳優さんがいいね。ウェズリー・スナイプスか。いかついサングラスを取ったらあんなに澄んだ瞳が出てくるなんて誰が想像できた? はじめて見たときはハッとしました。

なんかブレイドのシルエットが侍チックというかキマッてるなあと思ってたらマーベル・コミックの映画化だったのね。そりゃコミック特有のキャラクター感が出るわ。

ブクブクに太った記録係を訪ねるところとか古文書が展示されている部屋とかよかったな。

儀式をする場所も、いかにも胡散臭い神聖さがあって好きだった。そこでのブレイドとフロストの剣戟もすごくよかったし。

ブレイドがとらわれて石碑みたいなところにいれられて血を流して、その血が建物を伝って流れ落ちていくところはワクワクした。非効率すぎて現実には有り得ないですが、そこがまたいいんだよな。

というかウィスラーが死んだのがめちゃくちゃ悲しいのですが……。いいやつだったしブレイドといいコンビだったのに。

まあ気の強い美人の相棒もそれはそれでいいか……。

これって三部作らしいけど、続き観ようかな、どうしようかな。あ、なんか感想を書くと観たくなってきた。

でもウィスラー死んじゃったしな……はあ。二部で死んでもよかったんじゃない? もうちょっとウィスラーとブレイドのコンビを楽しみたかったよ。

この映画、90年代の映画だから贔屓目に評価しちゃったけど、映画の好き嫌いでいったらどちらでもないんだよな。

うーん、気が向いたら続き観ます……。

映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』感想

そんなにゴーストバスターズファンというわけではないのですが、一応観てみた。

だって『ストレンジャー・シングス』のフィン・ウルフハードが出ていたから……。あの子めっちゃいい。アンニュイな見た目と少年らしい粗雑さが不安定に混在しているのがいい。

初代『ゴーストバスターズ』の内容をほとんど覚えていなくて、初代から引き継がれている設定とか伏線がいまいちわからなくて残念。

映画の雰囲気としては、ちょっと前に流行った80年代アメリカを彷彿とさせる作り。

『ストレンジャー・シングス』から始まった流行、つまり80年代少年少女青春ノスタルジックを現代ナイズしている感じがした。まあ『ゴーストバスターズ』自体が80年代の映画だから当然といえる。

もしわたしがゴーストバスターズファンだったらもっと楽しめただろうに……。いやでも、逆にファンじゃないから過剰な期待をせずに楽しめたのかな。

だって2016年にリブートされた女性版『ゴーストバスターズ』もわりと平気で観れたし……。まあセンスのない下品なギャグにはちょっと賛同しかねるけど、それなりに楽しめたような記憶がある。

もし筋金入りのゴーストバスターズファンだったら、評価は違っていたかもしれない。

最近の映画ってテンポよくて脚本も無難でCGも俳優も監督もそれなりに上手で、ひっかかりなくスムーズに観れるのが美点でもあり難点だよね。

『ゴーストバスターズ』という大作に続く作品として、高い期待に応えなくてはいけないしヒットさせなければいけない。そういうプレッシャーがあっただろうから、手堅くヒットを狙う作品になってしまうのは仕方ないね。

肝いりの作品は安心して身を任せられる。一定のおもしろさを約束されているから。でも、そのおもしろさってさんざん研究されて理論化されたストラテジーな気がしちゃうんだよな。

だからわたし個人の性癖をえぐるような作品にはなり得ないし、心に傷をつけていつまでも記憶に残り続ける作品にはならない。

初代映画の俳優が一堂に会するところとか亡くなった俳優が出てくるところとか、めちゃくちゃ熱いシーンで感動したし涙もでた。

初代ファンも新規ファンも納得する出来栄えだったと思う。映画としての完成度は高いっちゃ高いんだけど、ちょっと惜しいのは無難な印象が拭えなかったところかな……?

全方位を満足させようとすると尖った作品は作れないのかもしれない。でも往年のファンが感じていたであろうワクワクを再現しようとする姿勢を感じたし、そのワクワクの片鱗も味わえた気がする。

でも「気がする」だけで、やっぱり映画体験ってリアルタイムが大事なんだよなあ、と今更思う。

初代『ゴーストバスターズ』をリアルタイムで体験していないわたしには、この映画の評価を正当に下すことはできないのかもしれない……。

ダレン・シャン『デモナータ 6幕 悪魔の黙示録』感想

2009年に5幕を読み終わって、15年経てやっと6幕を読みました……。もう5幕までの内容ほとんど覚えてないよ……。

図書館に行く度に6幕を手に取ってさわりを読んで結局棚に戻す、ということを15年続けてきたんだな……。

ダレン・シャン作品って、あまりの過酷さに読み進めるのを躊躇する箇所がありますよね。デモナータシリーズでは6幕が鬼門だったんじゃないかな。

なんで突然読み進めようと思ったのかというと、『アルテミス・ファウル』が絶妙に児童書欲を煽っておきながらカタルシスを与えてくれなかったから笑。

わたしが児童書に求めているものってなんだ? と考えたところ、原点に戻りたくなったんですね。わたしが本物の児童だったころに頭をぶん殴られた作品に……。

内容まったく覚えていないにもかかわらず、めちゃくちゃおもしろかったです。わたしが求めていたものはこれだ! となりました。満足。

あんな分厚いのに一日で読んじゃいましたからね。さすがダレン・シャンです。

主人公の葛藤、弱さ、強さ、現実の辛さ、残酷さ、そして愛。すべてがまっすぐ心に届く。納得のいくものとして受け入れられる。

苛烈な運命に翻弄される少年の、年齢相応の苦悩があざやかに描かれていて、これこれ、わたしが欲しかったのはこれなんだよ! と興奮しました。

児童書にしてはあまりにもむごすぎる描写が逆に気持ちいい。あまりにも突き抜けすぎていて疑義をさしはさむ余地がない。

冷静にみたらダレン・シャン作品っていろいろツッコミどころがあるのかもしれないけれど、冷静にみれるわけがないんだよな。

わたしが生まれたばかりのひよっこだった頃に強烈に刷り込みされてしまって、わたしの児童書の親はダレン・シャンなんです。ダレン・シャン作品を読んだらおもしろいと思ってしまう。

そんなわけで、ひさしぶりのダレン・シャンフィーバーが巻き起こったので、せっせと読み進めていきたいです。

2024/05/02

ドラマ『ママと恋に落ちるまで』感想

『ママと恋に落ちるまで』の前に『ブルックリン・ナイン-ナイン』を観終わってたんですが、感想書くの忘れてた。どっちも2周目です。

毎日ご飯食べるときにドラマ観ているんだけど、次は何を観よう。お気に入りのドラマは全部2周しちゃったから、新しいのを開拓しないといけない。

だけどなあ。ご飯中に観るものだからいろいろ条件が揃わないといけないんだよね。アクションサスペンスホラーグロはだめだし、現代ものでちょっと軽いのがいいんだよな。迷う。

とりあえず『ギルモア・ガールズ』があとちょっとで観終わるのでそちらを我慢して観る……。

『ママと恋に落ちるまで』めっちゃ好きなので2周目も面白く観終わった。9シーズン、全208話か。暇さえあれば一日中観ていたので、一気に観終わっちゃって悲しい。

一回目を観終わるころにはバーニー役の人ってゲイだろうなあと思っていて、最近『シングル・アゲイン』というゲイドラマに出ていたのでやっぱりなと思っていたのですが。

今回観終わったあとWikipediaを見てたら衝撃的な事実を知った。バーニー役の俳優とスクーター役の俳優が付き合っていてのちに結婚した……だと!?

ええ!? スクーターと……!? ほかにもっとゲイっぽい人いっばい出てたのに、スクーターと……!? スクーターはぜんっぜんゲイに見えなかった……。意外すぎる……。

バーニー役の人が乳首にピアスをつけてたのもちょっとした衝撃だったな。なんかスターの私生活を垣間見てしまったような気がして罪悪感に似たものを感じた……。

バーニー役の人って『ゴーン・ガール』に出ているのを観たんだけど、本人としてはシリアス路線でいきたいのかなあ。

まあバーニーの印象が強すぎてそのイメージに引っ張られてしまうよね。コメディ以外をやりたいと願うのは自然なのかもしれない。バーニーにいつまでも縛られるのは辛いよね。でも一番バーニーが輝いていたよな……。

テッドの奥さんになるのは誰か、あれだけ引っ張って期待を持たせて紆余曲折いろんな女の人が候補にあがったなかで、最後に納得させるのすごすぎる。

このドラマ最後が秀逸すぎて、観た作品の内容けっこう忘れちゃうわたしでもしっかり覚えている。

ほんと何度でも観たいドラマだ。満足。内容忘れてもう一回観たい。

2024/05/01

森博嗣『つぶやきのクリーム』感想

正論が100個容赦なく書いてある本だった笑。

わたしは以前まで好きな人は100%全肯定する人間だったんだけど、この歳になると落ち着いてきて、どんなに好きな人でも苦手な部分があると思えるようになった。

all or nothingな思考は危険で魅力的で抗いがたいけれど、ちょっとずつバランスとれてきたような気がする。

そんなわけで、わたしは森博嗣が大好きなんだけれど、この本はそんなに好きではない、と認められるようになった。

森博嗣の小説は崇拝しているけれど、森博嗣のエッセイや新書に関してはそこまでのめり込めないなあ……。

いやあ、今までは全部の本を神格化して崇めていたんですけどね……。それはそれ、これはこれ、と考えられるようになったのかな。

この本が苦手だとバッチリ自覚した箇所が明確にある。

100個めの呟き「最近、ようやく大人になれたかもしれない」の最後の数行で、評価がガクンと下がった。

まあこの過剰な反応は自分の成育歴とか歪んだ信念とかその他諸々に起因するんだと思います。個人的な歴史の積み重ねのなかで築いた偏見によるものなので、理不尽な評価だとは思います。

ひっかかったのは「そういえば、僕には子供がいる。」から始まる数行。奥様が子供の面倒を見て自分は遊んでいた、そのときに奥様は大人になったのではないかという内容。

そりゃあね、森博嗣も遊んでいたわけではないと思いますよ。ちゃんと仕事して小説書いて億万長者になったわけですから。

それになんといっても天才ですから、偉大な事業を成し遂げることに時間と力を使ってほしいとも思う。

冷静に考えるとそうなんだけど、反射的にわたしは奥様に感情移入してしまった。奥様は大人にならざるをえなかった。それは否応なく押しつけられたからで、旦那様の尻ぬぐいをさせられてるってことじゃないかと思ったから。

父親に放置された子どもの気持ちも想像してしまう。もちろん人は自由に生きられるし合理的に思考して自分のために行動していいと思う。自分の人生をどう生きようがその人の勝手。

だけど、その勝手に生きる人のそばで、自分の気持ちを押し殺して理不尽を耐えてやるべきことをやりたくなくてもやる人がいるんじゃないだろうか。

どんなに正論を言われても、頭でそれを納得しても、ないがしろにされた気持ちはなかったことにはできないような気がする。

もちろんぜんぶ想像に過ぎないし、森博嗣を糾弾するつもりはない。というか、それでよかったと思う。

だって森博嗣の作品は多ければ多いほどわたしは嬉しいから。子育てや家事に時間を費やしていて作品を書く時間がありません、なんて言われたら複雑な気持ちになる。

むしろもしわたしが森博嗣の奥様だったら、ぜんぶなんでもやってあげると思う。家のことはいいから小説書いてわたしに読ませてって言うと思う。家事は誰でもできるけど、森博嗣の小説は森博嗣にしか書けないから。

だから森博嗣が家族をないがしろにしているように感じてしまったのは条件反射みたいなものなんだよなあ。よく考えるとそんなに悪いことでもないのかもしれない。奥様や子どもが納得しているなら外野の意見なんてどうでもいいし。

いろいろ考えられるようになったのはいいことだな。以前だったら「森博嗣は天才なんだからすべて正しい!」と思考停止して賞賛していただろうから。

もちろん彼は天才だし、それは免罪符になると思う。森博嗣のしたことは正しいとも思う。だけどそれを100%受け入れられるかどうか、自分の頭で少しは考えられるようになった。

まあグダグダ言ってますが、結局は個人の好みなんですよね。自分がそれを好きか嫌いか、大真面目に考えてるだけ。

なにはともあれ、この本に関しては、わたしは正論だけ言われてもそこまで面白味を感じられなかった。正論って一行で済むんですよ。

正論だけで生きられない人間の性をつらつら書いたものが小説だとしたら、わたしは小説が好ましいと思う。個人的にね。

なら読むなって話ですが、森博嗣の小説は好きなので気になるじゃないですか……。これからも好みじゃなくても読み続けます。苦手な部分もひっくるめて好きなので。

ジェーン・オースティン『いつか晴れた日に』感想

やっと読み終わったー……。時間かかったなあ。 ジェーン・オースティンの作品は『 高慢と偏見 』と『 エマ 』しか読んでなくて、その二つがとてもおもしろかったから『 いつか晴れた日に 』を読んだんだけど。 なんというか、先述の二作品が作家として成熟した時期に書かれたものなんだろうな...